発表! モナドが選ぶ2019年のベスト映画

2014年にスタートして今年で5回目となるモナドが選ぶベスト映画。2019年は、長編デビュー作「マジカル・ガール(Magical Girl)」がモナドの2016年版ベスト映画第2位に選ばれたカルロス・ベルムト(Carlos Vermut)監督の最新作「シークレット・ヴォイス(Quién te cantará)」から始まり、フランスの大御所オリビエ・アサイヤス(Olivier Assayas)監督の「冬時間のパリ(Doubles vies)」まで合計67本の映画(一覧はこちら)をご紹介してきました。

Bestfilms2019

その中から厳正なる審査と独断で決定した今年のベスト5と各賞の発表です♪♪(2018年版はこちら

★2019年BEST映画

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堂々の第1位に輝いたのは「エイス・グレード(Eighth Grade)

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“イケてない”主人公のケイラがとにかく愛おしく、応援したくなる映画です。彼女のとぼとぼと歩く後ろ姿がちょっぴり切なくて、高校の体験入学で案内役となったオリヴィアから電話をもらったときの喜びようが可愛らしくて、いつまでも記憶に残ります。

Best2
第2位はノア・バームバック(Noah Baumbach)監督の緻密に作り込まれた脚本と出演者の熱演が冴え渡る「マリッジ・ストーリー(Marriage Story)

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埋められそうに見えた夫婦の “space” が広がり、次第に修復不可能に。観ていて心が引き裂かれそうになります。スカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)とアダム・ドライバー(Adam Driver)が感情をさらけ出して言い争うシーンは映画史に残る名場面でしょう。

Best3
第3位は、前作「イーダ(Ida)」以降、次作が待ち遠しかったパヴェウ・パヴリコフスキ(Pawel Pawlikowski)監督の最新作「COLD WAR あの歌、2つの心(Zimna wojna)

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期待を裏切らないどころか、予想を超える味わい深さ。前作同様モノクロームですが、前作が「静」とすれば本作は「動」。戦時下の激しく親密な愛の物語に酔いしれます。

Best4
第4位は、監督アリーチェ・ロルヴァルケル(Alice Rohrwacher)と撮影監督エレーヌ・ルヴァール(Hélène Louvart)の二人の女性が紡ぎ出したイタリア映画「幸福なラザロ(Lazzaro Felice)」。純朴な主人公ラザロのまっすぐな眼差しが印象的です。

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ここ数年、女性の監督や撮影監督による優れた作品が注目されてきているように感じます。本作でイタリアの陽光を捉えたエレーヌ・ルヴァールは、その直前に撮った「ペトラは静かに対峙する(Petra)」ではスペインの美しく雄大な景色を見せてくれています。

Best5
第5位は、数々の映画祭で絶賛された「女王陛下のお気に入り(The Favourite)」です。

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ヨルゴス・ランティモス(Yorgos Lanthimos)監督が手掛けるとコスプレ歴史物も一筋縄ではいきません。3人の女性たちのパワープレーが笑えます。

★審査員特別賞

ROMA ローマ
ご存知、昨年の映画賞を総なめにした作品。日本では今年に入ってようやく劇場公開されました。素晴らしい作品ですが、いまさら感があるので審査員特別賞に。

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アルフォンソ・キュアロン(Alfonso Cuarón)監督の半自叙伝的な映画というだけあって、監督・脚本・撮影をすべて自ら手掛けた思い入れたっぷりの作品。監督のあたたかく優しい眼差しを感じます。

蜘蛛(Araña)
チリの現代史をサスペンス仕立てで描いた映画です。ストーリー展開の巧みさ、俳優陣の演技も素晴らしい。

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今年は「シークレット・ヴォイス(Quién te cantará)」や「ペトラは静かに対峙する(Petra)」など上質なスペイン映画もありましたが、このところ南米のスペイン語圏に優れた作品が多いような気がします。そう言えば、昨年の「ナチュラルウーマン(Una Mujer Fantastica)」もチリの映画でしたね。

★BEST 映像賞

今年の映像賞は猿(Monos)で決まりでしょう。こちらも南米の映画。コロンビアの大自然をバックに圧倒的な迫力で魅せてくれます。

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この「猿(Monos)」も審査員特別賞の「蜘蛛(Araña)」もラテンビート映画祭での特別上映ですので、ご覧になっていない方がほとんどでしょう。こういう秀逸な映画がもっと一般上映されるようになるといいなと思います。

★BEST 主演女優賞

今年のアカデミー賞はじめ、数々の主演女優賞を獲得した「女王陛下のお気に入り(The Favourite)」のオリビア・コールマン(Olivia Colman)がモナドでも一等賞です。子供をたくさん失い、精神的にまいってしまったアン女王の不安な気持ちと癇癪持ちな部分を巧みに演じています。現在放映中のNetflixの人気ドラマ「ザ・クラウン」ではエリザベス女王を演じ、そっくりだと評判になっていますね。

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マリッジ・ストーリー(Marriage Story)」のスカーレット・ヨハンソンの演技も素晴らしかったです。ハリウッドの華やかなイメージがありますが、こういう上質な小品にもっと出て欲しいものですね。同じく夫婦の離婚を扱った「ワイルドライフ(Wildlife)」のキャリー・マリガン(Carey Mulligan)、英国歴史物「ふたりの女王 メアリーとエリザベス(Mary Queen of Scots)」のシアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan)も候補に上がりました。

★BEST 助演女優賞

今年は、脇を固める女優・男優の演技が光る映画が多かった気がします。ここのところ寂しげな母親役が多かったローラ・ダーン(Laura Dern)ですが、「マリッジ・ストーリー(Marriage Story)」では辣腕弁護士役がハマり役でした。

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この他、「バイス(Vice)」で“女である”ばかりに果たせぬ夢を夫に疑似達成?させるチェイニー副大統領の妻役を演じたエイミー・アダムス(Amy Adams)、思い返してみれば「サスペリア(Suspiria)」で誰よりも怖かったミア・ゴス(Mia Goth)、「ガラスの城の約束(The Glass Castle)」でホームレス状態の母親を演じたナオミ・ワッツ(Naomi Watts)、「希望の灯り(In den Gängen)」で不思議な魅力を放っていたサンドラ・フラー(Sandra Hülle)と迷った末のローラ・ダーンです。

★BEST 主演男優賞

出演作が目白押しで活躍目覚ましいアダム・ドライバー。「マリッジ・ストーリー(Marriage Story)」の終盤で、子供にせがまれ元妻が書いた夫の良い部分リストを読み上げ、声が詰まるシーンは堪りません。

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実は「ファースト・マン(First Man)」で宇宙飛行士ニール・アームストロング(Neil Armstrong)を演じたライアン・ゴズリング(Ryan Gosling)も、娘を失って打ちのめされながらも宇宙飛行の任務を果たしていく姿が感動的で迷いました。
ドント・ウォーリー(Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot)」で問題ある障碍者を演じたホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)、「ホテル・ムンバイ(Hotel Mumbai)」で迫真の演技をみせたデヴ・パテル(Dev Patel)、「アメリカン・アニマルズ(American Animals)」での怪演が光るバリー・コーガン(Barry Keoghan)も印象に残っています。

★BEST 助演男優賞

今年の始めは「バイス(Vice)」でジョージ・W・ブッシュを演じたサム・ロックウェル(Sam Rockwell)がダントツだと思っていたのですが、「ドント・ウォーリー(Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot)」でAAの自助グループの運営者を演じたジョナ・ヒル(Jonah Hill)に持って行かれました。

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ウルフ・オブ・ウォールストリート(The Wolf of Wall Street)」の下品な副社長役のイメージしかなかったので、同じ役者なの?と思うくらい、素晴らしい演技でした。
アイリッシュマン(The Irishman)」で全米トラック運転組合のリーダーだったジミー・ホッファ(Jimmy Hoffa)を演じたアル・パチーノ(Al Pacino)のキレっぷりも良かったです。

★BEST オシャレ映画

今年は、「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス(Westwood: Punk, Icon, Activist)」「マックイーン モードの反逆児(McQueen)」「マルジェラと私たち(We Margiela)」と、ファッション界のドキュメンタリー映画が3本も上映されました。ファッション界が業界をあげて盛り上げていこうという動きでしょうか。

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特にヴィヴィアン・ウエストウッドは、彼女のど根性あふれる生き方そのものがオシャレです。
コスプレ系の衣装でいうと「コレット(Colette)」でしょう。時代の流れや彼女の生き方が反映されたファッションの変遷が見応えあります。

★BEST ミュージック賞

音楽が印象に残った映画というとアルゼンチン映画永遠に僕のもの(El Ángel)で決まりです。

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その他、監督ダニー・ボイル(Danny Boyle)、脚本リチャード・カーティス(Richard Curtis)で面白くないはずがない「イエスタデイ(Yesterday)」は、ビートルズ好きでなくても楽しめる音楽映画でした。

★観るだけでぐったりするで賞

映画館で観る醍醐味は、巨大なスクリーンと高品質の音響で映画の世界にどっぷりと浸かれること。実話ベースの映画「ファースト・マン(First Man)」「ホテル・ムンバイ(Hotel Mumbai)」「プライベート・ウォー(A Private War)」は、映像に集中しすぎて(良い意味で)ぐったりしてしまいました。

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なかでもファースト・マン(First Man)の緊張感はハンパありません。若干34歳のデイミアン・チャゼル(Damien Chazelle)監督のポテンシャルもハンパないですね。

今年もモナドのブログをお読みいただき、ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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