映画「007 スペクター(Spectre)」

00 話題作ですね。前作「スカイフォール」が面白かったので、早速、先行上映で観てきました。

選んだのはもちろんIMAXのシアター。この手の作品は迫力ある映像と音響が要なので、狭い劇場や設備の古い施設でストーリーだけ追っても、その良さの半分も味わえません。

ましてや前作のヒットをうけて製作費を2億5000万ドルに増やし、世界興収10億ドルを目指していると噂される大作。観る映画館によって満足感が大きく違うと思います。最新の映画館のお気に入りのシートでご覧になることをお勧めします。

さて、前置きが長くなりましたがこの作品、2時間半という上映時間の長さもありますが、何といっても隅々までおカネがかかっていますので、満足感が高いというか、次から次へとご馳走がでてきてお腹いっぱいになる感じです。ほとんど目を離す隙がありません。

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まず幕開けはメキシコの死者の日(Día de Muertos)。パレードの雑踏を抜けたボンドが美女と建物に入り、ロマンチックな雰囲気になりかけた部屋を抜け出して敵が会合している窓に銃の照準を合わせるまでを、ワンカットでカメラが追います。

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膨大な数のエキストラに演技させる費用も、屋上伝いに建物を移動していくボンドを撮る技術も大変だと思いますが、それを成し遂げるあたりがサム・メンデス(Sam Mendes)監督なのでしょう。

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ちなみに、ボンドと部屋に入る美女は「MISS BALA/銃弾」主演女優のステファニ・シグマン(Stephanie Sigman)。他の2人のボンドガールに注目が集まっていますが、彼女もメキシコを代表する人気女優の1人です。

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ここでPale Kingというキーワードが登場し、それが前々作から敵対しているミスター・ホワイトのことだとわかります。その後、彼の娘であるマドレーヌ・スワン博士に会いにオーストリアの医療施設を訪ねるのですが、その博士を演じたのが「アデル、ブルーは熱い色」のレア・セドゥ(Léa Seydoux)。すっかり有名になった今も「ミッドナイト・イン・パリ」の頃から変わらない、あどけない表情が魅力なのでしょう。彼女が「カジノロワイヤル」のヴェスパー以来、久々にボンドを本気にさせるミューズとなります。

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そしてもう1人のボンドガールを演じたのはイタリアの至宝、モニカ・ベルッチ(Monica Bellucci)。ボンド役のダニエル・クレイグ(Daniel Craig)より年上だということで話題になっているようですが、さすがイタリア女、相変わらず妖艶です。

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シチリア!シチリア!」ではその姿態で魅了し、近作「サイの季節」では染み入るような演技で存在感を示していましたが、本作でも、短い出演ながら彼女らしい色香を振りまいていました。

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彼女は、ボンドがメキシコで消すマルコの未亡人として登場するわけですが、その葬儀のシーンにはサム・メンデス監督がカメオ出演しているそうですので、参列客にも注目してみてください。

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メキシコ、イタリア、オーストリアという素晴らしいロケーションの後に続くのはモロッコ。ちょっとネタバレになってしまいますが、もうひとつのキーワード、Americanというのは、アメリカ人という意味でなく、タンジールにあるL’Americainというホテルのことなのです。

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そのホテルでまた謎が解き明かされ、マドレーヌと列車に乗ってサハラに向かうことになるのですが、ここでお決まりのシェイクしたマティーニが登場します。しかし、よく聞いているとマドレーヌは"vodka martini, make it dirty"と注文していて、どうやらあれはダーティマティーニのようです。つまり、ボンドの好みをちょっとアレンジしたマティーニをオーダーすることで個性をアピールし、それでボンドの気を惹いてしまうわけです。

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そうこうするうちに宿命の敵スペクターの本拠地に到達するのですが、今回の悪役は「おとなのけんか」「ビッグ・アイズ」のクリストフ・ヴァルツ(Christoph Waltz)が演じるブロフェルド。つまりスペクターの親玉との対決となります。この場面では、タイトルバックや死者の日から象徴的に使われてきた骸骨の意味を明らかにしながら、傍らには白猫を登場させて昔からのファンを喜ばせるという芸の細かさ。

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そしてクライマックスはロンドン。さすがに実写では無理なシーンですので、セットで撮った映像と組み合わせているそうですが、これまた迫力十分です。ここをご覧になれば、最後まで目を離せないという意味がおわかりになると思います。

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なお、その他の出演者としては、前回の終わりにMになったレイフ・ファインズ(Ralph Fiennes)や、ロリー・キニア(Rory Kinnear)演じるMの部下ビル・タナーがかなり活躍します。彼は「イミテーション・ゲーム」で刑事役だった人ですね。ミス・マネーペニー役のナオミ・ハリス(Naomie Harris)の出番も割と多くて、自宅にいるシーンまで出てきます。

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それから、Mを排除しようとする官僚、Cことマックス・デンビーを演じたのは、「パレードへようこそ」の書店主や「ジミー、野を駆ける伝説」の神父役を演じていたアンドリュー・スコット(Andrew Scott)。

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Qは引き続き「追憶と、踊りながら」のベン・ウィショー(Ben Whishaw)で、本作でも前作同様いい味を出しています。たとえば秘密兵器のオメガの腕時計を渡す際、どんな機能があるか尋ねるボンドに、飄々と"It tells the time(時間がわかります)"と応じる風情がたまりません。もちろんこのオメガも重要なツールで、大切な場面で再登場します。

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こういったツールをはじめ、舞台となる場所や着る服や乗るクルマについて書き連ねていくと終わらなくなりますので、このあたりでやめますが、いずれにしても見どころ満載の娯楽大作です。わざわざ映画館に足を運ぶだけの価値はあると思います。

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公式サイト
007 スペクターSpectre

[仕入れ担当]