映画「トラッシュ! この街が輝く日まで(Trash)」

Trash0愛を読むひと」「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のスティーブン・ダルドリー(Stephen Daldry)監督が、英国人作家アンディ・ムリガン(Andy Mulligan )の小説をベースに、「ラブ・アクチュアリー」「パイレーツ・ロック」で監督としても活躍したリチャード・カーティス(Richard Curtis)の脚本で撮った作品です。

映画では、小説の舞台であるアジア(フィリピンのスモーキー・マウンテンのような場所)から、ブラジルのファヴェーラに場所を変えて、3人の少年によるサスペンスが繰り広げられます。

ちょっと「シティ・オブ・ゴッド」に似た印象がありますが、音楽のアントニオ・ピント(Antonio Pinto)と美術のトゥーレ・ピーク(Tulé Peak)はどちらの作品にも関わっているそうです。ちなみに撮影のアドリアーノ・ゴールドマン(Adriano Goldman)はTV版「シティ・オブ・ゴッド」と映画「シティ・オブ・メン」「闇の列車、光の旅」を撮った人。

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スティーブン・ダルドリー監督は「リトル・ダンサー」で世に出ただけあって、「ものすごくうるさくて……」のブログにも書いたように、少年の描き方が抜群。その上、リチャード・カーティスの脚本ですから、スラムで暮らす少年の話でありながら、常に前向きな雰囲気を失いません。結末まで気持ち良く楽しめる一本に仕上がっています。

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リオデジャネイロ郊外のスラムでゴミを漁って暮らしている少年、ラファエルがゴミの中から財布を拾います。

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とりあえず親友のガルドと紙幣を分け合うのですが、警察が財布の大捜索を始めるのを見て、何か秘密が隠されているに違いないと、下水管で暮らすラットに相談します。

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財布の中にあった鍵がロッカーキーであることを見抜いたラット。警察の監視をかいくぐって駅のロッカーに手紙を発見し、3人は手紙の宛先に接触しようと考え始めます。

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少年たちの動きを訝しんだフェデリコ警部にラファエルが捕らえられてしまいますが、ガルドは教会でボランティアをしている米国人女性オリヴィアにウソをついて、刑務所に捕らえられている手紙の受取人との面会を果たします。

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そこで、暗号の解き方を伝えられたガルド。フェデリコ警部の追求の手が迫る中、ラファエル、ラットと3人で力を合わせて秘密に迫っていき、物語はスリリングに展開していきます。

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有名どころでは、オリヴィアを演じた「ドラゴン・タトゥーの女」「her/世界でひとつの彼女」のルーニー・マーラ(Rooney Mara)と、彼女が働く教会の神父を演じた「星の旅人たち」のマーティン・シーン(Martin Sheen)が出ています。いずれも好演していますが、少年たちの存在感に圧倒されてしまった感も否めません。

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ラファエルを演じたリックソン・テベス(Rickson Teves)は、実生活でもロシーニャ(Favela da Rocinha)というブラジル最大の貧民街で暮らしているそうで、あの自然な演技も当然なのでしょう。ラットを演じたガブリエル・ウェインスタイン(Gabriel Weinstein)以外、リックソン・テベスもガルドを演じたエデュアルド・ルイス(Eduardo Luis)もまったくの新人だそうですが、彼らに支えられた映画です。

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スティーブン・ダルドリー監督らしい、将来への希望を感じさせる結末が素敵で、終盤の画面いっぱいに広がるプエルトリコ・サンフアン(Viejo San Juan)のビーチの美しさがしっくりと馴染む一本でした。

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公式サイト
トラッシュ!この街が輝く日までTrash

[仕入れ担当]