映画「ソーシャル・ネットワーク」のヒットが記憶に新しいデビッド・フィンチャー(David Fincher)監督の最新作です。
一昨年に日本で公開された同名映画のリメイクなのですが、原作となった小説そのものが面白いので、スウェーデンで製作されたオリジナル版の映画も非常に面白く、このブログで少し書いた通り、私は3部作全部みています。
映画の内容は、一言で言ってしまえば、少女の失踪事件を追ううちにさまざまな闇が現れ、それが複雑に絡み合っていくサスペンス。スウェーデンの陰鬱な空気感が漂い、最後までハラハラドキドキする映画です。
ミレニアム誌に発表した記事で名誉棄損の判決が出たミカエル。ジャーナリストとしての将来を危ぶんでいると、なぜか有力財閥の前会長であるヘンリック・ヴァンゲルから調査を頼まれます。依頼内容は、育児放棄した甥夫婦の代わりにヘンリックが面倒をみていた少女、ハリエットが、36年前、財閥一族が住む島から姿を消した事件の真相究明。
アシスタントが欲しいというミカエルに、ヘンリックの顧問弁護士が紹介するのが、モヒカンヘアにボディピアス、背中にドラゴンタトゥが入った女性、リスベット・サランデル。ハリエット事件の調査にミカエルが適任かどうか、事前調査をした際の調査員で、調査報告書にはミカエルのメールのやり取りまで漏らさず記録している腕のいいハッカーです。
ミカエルを演じるダニエル・クレイグ(Daniel Craig)と、リスベット役のルーニー・マーラ(Rooney Mara)の2人が、さまざまな危機に見舞われながら謎に迫っていくストーリーを、ヘンリック・ヴァンゲル役のクリストファー・プラマー(Christopher Plummer)や、ミレニアム誌の編集長エリカ役のロビン・ライト(Robin Wright)といった力のある俳優たちが支えていきます。
ちなみにルーニー・マーラはこれでアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされていますが、数多の有名女優を押しのけての抜擢だからでしょうか、特殊メイクではなく実際にボディピアスをする等、渾身の演技をみせています。「ソーシャル・ネットワーク」のお嬢さん役とは、ひと味もふた味も違います。
この映画の魅力は、観ている側が知らず知らずのうちに巻き込まれていくような疾走感でしょう。
まずタイトルバックの悪夢のような映像に、レッドツェッペリンの Immigrant Song のカバーが絡んでくるあたりで、すでに映画の世界に引き込まれていきます。北欧が舞台の映画ということで選ばれた曲なのかも知れませんが、あの叫び声とリズムが醸し出す不穏な空気はスウェーデンの重たい空にぴったりです。
そしてエンドロールで流れるブライアン・フェリーの Is Your Love Strong Enough のカバー。この曲を女性の声で切々と歌い上げることで、続編のあるエンディングをうまく締めくくっていますし、これ以外にも、暴力的なシーンでエンヤの Orinoco Flow が流れたり、ミュージックビデオ出身の監督らしい絶妙な演出が随所にみられます。
難を言えば、オリジナル版より映像の美しさや切れ味が高まった反面、謎解きの部分が、若干、大ざっぱになっていますので、初めて観る人には物語の核心というかテーマがわかりにくいかも知れません。また、ルーニー・マーラの肌が非常にきれいなので、不健康な暮らしをしているリスベットという設定については、オリジナル版の方がわかりやすかったように思います。
さらに言えば、随所に Macintosh ユーザーが見ると???となってしまうようなシーンがありますし、僻地ゆえに携帯電話が通じないというカットが何回も登場するのに、その傍らの室内では、携帯電話のテザリングでノートPCがネットに繋がっていたり(原作ではADSLです)と、いろいろ気になる点もありましたが、それでも“デビッド・フィンチャーは技があるなぁ”と唸らせる映画でした。
公式サイト
ドラゴン・タトゥーの女(The Girl With The Dragon Tattoo)MGM
[仕入れ担当]