映画「闇の列車、光の旅(Sin Nombre)」

Poster 久しぶりにスペイン語の映画です。ホンジュラスからグアテマラ、メキシコを抜けて、アメリカに向かう不法移民の少女と、メキシコのギャングとの出会いを軸に、中南米の厳しい現実を描いたドラマ。Sin Nombreという原題(英題はWithout Name)の通り、不法移民とギャングという、死んだら無名のまま葬られるアンダーグラウンドな人々に光を当てた映画です。

実際にギャングや不法移民に会って取材したという監督は1977年生まれの新人、キャリー・ジョージ・フクナガ(Cary Joji Fukunaga)。エグゼクティブ・プロデューサーには、ガエル・ガルシア・ベルナル(Gael García Bernal)とディエゴ・ルナ(Diego Luna)といった「ルドandクルシ(Rudo y Cursi)」のコンビも名を連ねています。

とても重いテーマの映画ですが、メキシコの陽光の下、映像がとても美しいのが救いです。また、ホンジュラスの少女、サイラを演じたパウリーナ・ガイタン(Paulina Gaitan)の意志の強い表情と、メキシコのギャング、カスペル役のエドガー・フローレス(Edgar Flores)の虚無感漂う表情がうまく交差し、リアルな感動を与えてくれます。
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公式サイトの監督インタビューによれば「ホンジュラスでは牛乳が15リンピラするのに対し、一日の稼ぎはたったの45リンピラ。経済が崩壊し、多くの人が、家族をまともに食べさせることもできずにいます」とのこと。この貧困から抜け出すために列車の屋根に乗って国境を越えていくのですが、多くの国内問題を抱えるメキシコも同じこと。やはり貧困によって少年期からギャングの一員として暮らしていく人たちがいます。
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映画のストーリーは、不法移民から金品を奪おうとギャングのリーダーと列車に乗り込んだカスペルが、サイラに乱暴を働こうとしたリーダーを殺してしまうところから展開していきますが、貧困層のギャングが、より弱い貧困層の不法移民を食い物にしているこのシーンこそ、闇の深さを象徴している気がします。ワールドカップでは、ホンジュラスもメキシコも既に敗退してしまいましたが、せめてもっと応援してあげれば良かったと思いました。
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公式サイト
闇の列車、光の旅Sin Nombre

 

話が変わりますが、ワールドカップといえば、ルーニーが得点しないまま、イングランドが敗退してしまいましたね。最近NIKEが作ったWRITE THE FUTUREというショートフィルムに出てくるルーニーがとても面白かったので、ついでに書いておきます。

テーマが「一つのプレーが世界を変える」ということで、フランスのリベリーにパスを奪われたルーニーは、世界を落胆させてトレーラーハウスで暮らすまで落ちぶれますが、そのリベリーのドリブルを止めたルーニーは、世界を歓喜させて女王陛下に祝福されるといった具合。ルーニー以外にも、ドログバ、カンナバーロ、ロナウジーニョも出てきます。

クリスティアーノ・ロナウド映画化のシーンでは、ロナウド役としてガエル・ガルシア・ベルナルが登場。
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実はこのショートフィルム、監督したのが「アモーレス・ペロス(Amores perros)」や「21グラム(21 Grams)」のアレハンドロ=ゴンサレス・イニャリトゥ(Alejandro González Iñárritu)なのです。どうりでシーンの切り取り方がうまいはずです。

イニャリトゥ監督といえば、ハビエル・バルデム(Javier Bardem)主演の「ビューティフル(Biutiful)」がカンヌでお披露目されたばかりですが、こちらの映画も楽しみですね。

[仕入れ担当]