映画「星の旅人たち(The Way)」

Theway0 スペインで単に"El Camino"(直訳すると"The Way"、つまり"道")と言うと、サンティアゴ巡礼路(El Camino de Santiago)のことを意味します。この英訳を原題とし、サンティアゴ巡礼の旅を題材にした、文字通りのロードムービーです。

サンティアゴというのは、スペインの守護聖人、聖ヤコブ(Santiago el Mayor)のこと。スペイン北西部、ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)にヤコブの遺骸が祀られていて、巡礼者が集まる聖地になっています。ちなみに、Compostelaというガリシア語は、ラテン語のCampus Stellae(星の原野)に由来すると言われており、それにちなんで邦題が付けられているのだと思います。

能書きが長くなりましたが、巡礼をテーマにしているといっても、抹香くさい映画ではありません。どちらかというと、とても俗っぽい登場人物たちが繰り広げる、面白おかしく、少しだけ切ない旅の物語です。

カリフォルニアで眼科を営むトムが仲間とゴルフを楽しんでいる最中、フランスの警察から、息子のダニエルがピレネーで客死したと電話が入ります。

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遺体を引き取りに現地の警察に赴くと、ダニエルはサンティアゴ巡礼の途中で亡くなったと知らされ、世界を見たいと大学を辞めてから疎遠になっていたダニエルとの思い出を反芻するうちに、彼の代わりに旅を続けようとトムは決心します。

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ダニエルが残したバックパックを背負い(旭日旗が付いているのは、ダニエルがアジア各地を旅したから)、約800キロの巡礼路を1ヶ月かけて歩くトム。その途上でさまざまな人々と出会い、彼らとの交流を通じて、今まで狭かった自らの視野を拡げていきます。彼の職業が眼科医であるというのも、うまい設定です。

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主演のトムを演じたのはマーティン・シーン(Martin Sheen)、監督を務めたのは、ダニエル役として出演している実の息子、エミリオ・エステヴェス(Emilio Estévez)。どちらかというと、あのお騒がせ俳優、チャーリー・シーン(Charlie Sheen)のお父さんとお兄さんといった方がわかりやすいかも知れません。

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この息の合った父子も、個性あふれる共演者たちも良いのですが、やっぱりロードムービーですから、行く先々の風景は楽しみのひとつでしょう。

映画は、ダニエルの遺体が安置されているフレンチ・バスクの町、サン=ジャン=ピエ=ド=ポル(St. Jean Pied-de-Port)から始まり、ピレネーを超え、牛追い祭で有名なパンプローナ(Pamplona)の街など各所を通過して、モンテ・デル・ゴソ(Monte do Gozo)からサンティアゴ大聖堂の姿を臨みます。そして大聖堂のミサの後、海岸の町、ムシア(Muxía)まで。

普通、巡礼者はスペイン最西端のフィニステレ岬(Cabo Finisterre)を目指すそうですが、この映画ではヒターノ(ジプシー)の勧めでムシアの岸壁に行き、Nosa Señora da Barca 教会を背景に巡礼の旅が終わります。なんでだろうと調べてみたらこの海岸、別名、Costa da Morte(死の海岸)と言われているようで、どうやらそのあたりに理由がありそうです。

舞台はスペインですが、カフェの店員がピンチョスとタパスの違いをスペイン語で話す程度で、ほとんど英語の映画です。このピンチョスの話の裏にはバスクの問題があったり、重要な場面でヒターノが取り上げられていたり、密かにスペインの諸問題が織り込まれているのですが、そんなことは気にせず、気楽に楽しめる映画です。

いずれにしても、こういう映画を観ると、長い旅に出たくなりますね。それが唯一の困った点です。

公式サイト
星の旅人たちThe Way

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[仕入れ担当]