ドゥニ・ビルヌーブ(Denis Villeneuve)監督がフランク・ハーバート(Frank Herbert)の小説を映画化した「DUNE デューン 砂の惑星」の続編、というか後編です。前作は壮大な予告編という感じでネタ振りに終始しましたが、ようやくその伏線が回収されていきます。
引き続き圧倒的な映像表現で繰り広げられるこのシリーズ、出演者はさらに豪華になりました。皇帝の娘で史記の語り部でもあるイルラン王女の役でフローレンス・ピュー(Florence Pugh)、皇帝シャッダム4世の役でクリストファー・ウォーケン(Christopher Walken)、この「砂の惑星」編における最大の見せ場を作るハルコンネン家のフェイド=ラウサ役でオースティン・バトラー(Austin Butler)、原作とは違った役割を演じることになるレディ・フェンリング役でレア・セドゥ(Léa Seydoux)が新たに登場します。

もちろん主だった配役は前編と同じで、主人公ポール・アトレイデス役はティモシー・シャラメ(Timothée Chalamet)、その母レディ・ジェシカ役はレベッカ・ファーガソン(Rebecca Ferguson)、家臣ガーニイ・ハレック役はジョシュ・ブローリン(Josh Brolin)、フレメンのチャニ役はゼンデイヤ(Zendaya)、そのリーダーのスティルガー役はハビエル・バルデム(Javier Bardem)、敵対するウラディミール・ハルコンネン男爵役はステラン・スカルスガルド(Stellan Skarsgård)で甥のラッバーン役はデイヴ・バウティスタ(Dave Bautista)が演じています。教母ガイウス・ヘレネ・モヒアム役のシャーロット・ランプリング(Charlotte Rampling)も変更なしです。

この後編はジャミスからのタハッディの挑戦を乗り越えたポールがフレメンに受け入れられ、主導権を握っていく物語です。ポールはウスルというフレメン名とムアディブという呼び名を与えられて彼らの一員となり、ジェシカがシエッチ・タブルで彼らの教母の座を継いだことで、外部から救世主が現れるという、フレメンの伝説を裏付ける形になります。

以前から伝説を信じていたスティルガーはポールを指導者に祭り上げようとしますが、ポール本人は自分が救世主であることに疑念を抱き、一人の戦士としてアトレイデス家の復讐を果たすことを望みます。また彼の世話係だったチャニは、そんなポールに惹かれ、二人の関係が特別なものに変わっていきます。

とはいえ、周囲の期待が高まり、レディ・ジェシカの意図もあって次第にフレメンの信任を得ていき、その見た目の良さがカリスマとしての説得力(身も蓋もない話ですが)を高めます。

一方、彼らの共通の敵であるハルコンネン家は、当主ウラディミールの意向でメランジの採掘を進めて冨を得ようとします。しかし、たびたびフレメンのゲリラ作戦で妨害され、採掘で失態続きだったラッバーンが失脚し、代わりに同じく甥のフェイド=ラウサが後継者に指名されます。

それを披露する演し物として、闘技場でフェイド=ラウサが闘うのですが、通常は予め相手方に薬を飲ませて抑制するところ、薬なし、つまりイカサマなしの勝負でアトレイデス家の捕虜3人を倒します。冷酷な乱暴者という評判を裏付け、恐怖で民心を掌握するわけです。

そして皇帝家。アラキスでの権力争いはもともとシャッダム4世が仕組んだことであり、アトレイデス家が滅亡したことで、彼の目論見は一歩進んだわけですが、その娘イルラン王女はポールが生き延びているのではないかと考えています。
原作小説では章の区切りごとに彼女が著した史記が挟まれ、物語を補いますが、映画でもその設定を活かし、彼女が世の中の動きを見通し、記録している様子が描かれます。

イルラン王女もベネ・ゲセリットの卒業生ですが、原作小説では伯爵ハシミール・フェンリングの妻というだけの立場だったレディ・フェンリングも、映画ではベネ・ゲセリットの一員としてガイウス・ヘレネ・モヒアムの配下で動く女性として描かれます。

なぜビルヌーブ監督はこの部分を改変したか。これまで「静かなる叫び」「灼熱の魂」「複製された男」「ボーダーライン」「メッセージ」「ブレードランナー 2049」を観てきた印象として、この監督には血の宿命に対する強い意識がある(特に「灼熱の魂」)ように感じるのですが、この改変で、映画の終盤に明かされるポールの秘められた血筋と似た、将来に禍根を残す血筋を生み出した気がします。
映画におけるレディ・ジェシカは妊婦のまま、娘エイリアは誕生せず、ポールが未来を予見する中でアニヤ・テイラー=ジョイ(Anya Taylor-Joy)演じる成長した妹の姿が描かれるだけですが、原作小説では4歳のエイリアが男爵を倒し、続編で大きな役割を担うことになります。つまり次作ではエイリアが重要な登場人物になるはずです。レディ・フェンリングの意表を突く行動(原作にはない展開です)は、敵対する血筋を残し、女性同士(娘同士または母親同士)の対決へと導くための伏線なのではないでしょうか。

それはともかく、第1作目で散りばめられたネタの大半はこの後編で着地し、それなりにすっきりしますが、これで完結したわけではありません。原作の「砂の惑星」で描かれていたポールの子どもにも触れられませんでしたし、ベネ・ゲセリットの陰謀も仕込みの段階です。そして上に記したような新たなネタも出てきました。すでに次作の企画が進んでいるようですが、小説「砂漠の救世主(Dune Messiah)」も引き続きポールの物語ですのでティモシー・シャラメの出番もふんだんにあるはずです。いずれにしても完結までしばらくかかりそうですね。
公式サイト
デューン 砂の惑星PART2(Dune: Part Two)
[仕入れ担当]