映画「マイ・ファニー・レディ(She’s Funny That Way)」

00 往年のハリウッド風コメディ、いわゆるスクリューボール・コメディーの現代版です。登場人物たちが繰り広げる丁々発止が小気味良い、リラックスして楽しめる作品だと思います。

監督を務めたのは「ペーパー・ムーン」のピーター・ボグダノヴィッチ(Peter Bogdanovich)。同作でアカデミー助演女優賞を最年少受賞したテータム・オニール(Tatum O’Neal)が、本作にもウェイトレス役でカメオ出演しています。

彼女の他にも意外な人が本人役で出演するのですが(それも俳優ではなく監督)、映画関係者に愛されている監督なのでしょう。本作のプロデューサーを務めたのは、「ムーンライズ・キングダム」「グランド・ブダペスト・ホテル」のウェス・アンダーソン(Wes Anderson)と、「イカとクジラ」「フランシス・ハ」のノア・バームバック(Noah Baumbach)。「ファンタスティック・Mr.FOX」のコンビですね。

そして物語の軸となる男優は、ウェス・アンダーソンの大学時代からの盟友、オーウェン・ウィルソン(Owen Wilson)。「ミッドナイト・イン・パリ」では主役の映画脚本家、「インヒアレント・ヴァイス」では主人公に救われるミュージシャンを、どちらも髪型も何も同じままで演じていましたが、本作でも同じ風貌のまま出てきます。

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こう書くと仲良しグループが作った内輪受けの作品をイメージしそうですが、これがとても上質なコメディです。セリフ勝負の作品ですから俳優への要求レベルも高くて、特にオーウェン・ウィルソンが演じる役など、言い訳し続けるシーンをカットなしの長回しで撮っていたりなかなか大変そう。喋り通しの彼はまるで明るいウディ・アレンを見ているかのようでした。

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本作は、女優になった元エスコートガールのこれまでの人生を、辛辣な女性記者がインタビューしていくというスタイル。彼女の話に合わせて過去のエピソードが時系列で描かれていきます。

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幕開けは、オーウェン・ウィルソン演じる舞台演出家アーノルドがインターコンチネンタル バークレー(InterContinental New York Barclay)に投宿し、馴染みのエスコートガール派遣業者に電話しようとしたら、家族から電話がかかってきてドタバタするシーンから。その直前にはエレベーター内で俳優のセスと出くわし、自分の舞台に出る俳優ながら関係が微妙なところを匂わせていて、これが物語の仕掛けのひとつになっています。

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派遣されてくるエスコートガール、本作の主人公であるイサベラ・パターソン(愛称イジー)を演じているのはイモージェン・プーツ(Imogen Poots)。人気上昇中の若手女優ですが、まさに彼女の魅力を堪能するための映画と言って良いでしょう。「JIMI」でリンダ・キースを演じたり、Miu Miuの広告キャンペーン(YouTube)に出たり、このところ存在感を増してきた彼女の出生作になりそうです。

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アーノルドがイジーに「女優になりたいという夢のためにエスコートガールを辞めるなら3万ドルあげる」と持ちかけます。そうして彼女に転機が訪れるのですが、このピロートークに出てくるリスとナッツの話は全編を通して何度も登場し、これがある映画からの引用だとバレるシーンを含めてその映画へのオマージュになっているところもミソ。ちなみにこのセリフ(YouTube)は“In Hyde Park, some people like to feed nuts to the squirrels. But if it makes you happy to feed squirrels to the nuts, who am I to say nuts to the squirrels?”というもので、意味があるような無いような妙な喩え話です。

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その後、ベラスコ・シアター(Belasco Theatre)で上演される舞台のオーディションにイジーが現れ、驚くアーノルドの傍らで、主演男優のセス、主演女優でアーノルドの妻でもあるデルタが彼女の演技を大絶賛します。その上、脚本家のジョシュアがイジーに一目惚れしてしまい、彼のガールフレンドのセラピストや、彼の父親の探偵を巻き込んでドタバタ喜劇が展開していきます。

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このセスを演じたのが「パイレーツ・ロック」のリス・エヴァンス(Rhys Ifans)、デルタを演じたのが「LIFE!」に出ていたキャスリン・ハーン(Kathryn Hahn)。そしてジョシュア役は「ネブラスカ」のウィル・フォーテ(Will Forte)、セラピストのジェーン役はジェニファー・アニストン(Jennifer Aniston)という具合に力のある俳優を揃えているあたりも見どころの一つでしょう。

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使われている曲も“Cheek to Cheek”や“Steppin’ Out With My Baby”など洒落てますし、イジーの信念はヘプバーンの名セリフ“I believe that tomorrow is another day and I believe in miracles”ということで、これからのホリデーシーズンにぴったりのコメディ映画だと思います。私が観た回は、映画の内容に絡めてkono.miからナッツのプレゼントがありました。

Konomi

公式サイト
マイ・ファニー・レディShe’s Funny That Way

[仕入れ担当]