映画「LIFE!(The Secret Life of Walter Mitty)」

0 このところ実話ベースの作品ばかりが目立つ米国映画ですが、たまにはこういうファンタジー映画も良いですね。監督・主演を務めたのは「ズーランダー」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」のベン・スティラー(Ben Stiller)。1947年に公開された「虹を掴む男」という映画のリメイクだそうです。

その原作となっているのは、ジェームズ・サーバー(James Thurber)の短編小説なのですが、これは奥さんを美容院に送り届け、病院に行き、買い物をしてから、奥さんをピックアップするまでを描いた非常に短い作品。映画「LIFE!」では、同僚の女性に想いを告げられない気弱な男性が主人公ですから、まったく設定が違います。

唯一の共通点は空想癖があること。現実世界では極端に小心なのに、空想の世界では壮大な冒険を繰り広げているわけです。原作小説は短すぎて空想だけで終わってしまいますが、映画では本当に冒険に出掛けてしまうところがミソ。グリーンランドからアイスランド、アフガニスタンからヒマラヤまで世界の秘境を旅してしまいます。

6

ベン・スティラー演じる主人公のウォルター・ミティは写真誌「LIFE」の編集部でフィルム管理を担当している生真面目な男性。同僚のシングルマザー、シェリルが使っているマッチングサイト“eHarmony”に登録し、勇気を振り絞って彼女にコンタクトしようとした瞬間にエラーが出てしまうような冴えない人生を送っています。

1

“eHarmony”の担当者からは、面白い体験談を書いて注目を集めるように勧められますが、もちろんそんなものは書けません。ウォルターお得意の空想の世界にどっぷり浸って、勇敢な自分に酔い知れるのが関の山。

そんなとき「LIFE」の電子化に伴い、雑誌の廃刊が決まります。そこでリストラのためにやってきた新しい上司がテッド・ヘンドリックス。初対面のときから相性の悪さを感じていたウォルターですが、最終号の表紙を巡って、さらにテッドとの関係が悪化します。

2

表紙を撮っている伝説の写真家ショーン・オコンネルは、銀塩カメラを抱えて秘境を転々とする古いタイプの冒険家です。彼が最終号のために送ってきたフィルムの25番を表紙に使うように指示されるのですが、どうしても25番だけ見つかりません。ショーンに質問しようにも、携帯電話も持たずに秘境をさまよっている冒険家ですので、どこに連絡して良いかもわからないのです。

3

前後のフィルムから、ショーンの居所はグリーンランドだと推測したウォルターは、思い切って現地に飛ぶことにします。今まで空想の世界でしか冒険しなかった彼が、いよいよ自分の殻を打ち破って、新しい世界に踊り出すわけです。観客は心の中で彼を応援しながら、一緒に冒険旅行を楽しむことになります。

4

この映画の楽しさは、ショーン・ペン(Sean Penn)演じる写真家を追いかける冒険と、ウォルターの心の中にある空想の冒険が混ざり合って、夢と現実の境界が曖昧になるところ。基本的にはユーモア溢れるファンタジー映画ですが、ウォルターが世界を知ることによって、生き方を見直していく成長譚でもあります。

To see the world, things dangerous to come to, to see behind walls, draw closer, to find each other, and to feel. That is the purpose of life.

これが「LIFE」誌のモットーだそうですが、「世界を見て、お互いを発見して感じることこそ、人生の目的」というこの言葉こそ、映画「LIFE!」のすべてだと思います。

5

公式サイト
LIFE!The Secret Life of Walter Mitty

[仕入れ担当]