迫力ある映像と豪華なキャスティングで話題の作品です。その昔、富士山に5合目から登ったことがある程度で、本格的な山登りには縁もゆかりもない私ですが、これは体験してみなくては、と新宿まで出掛けてきました。
行き先はもちろんImax 3Dの劇場。こういった作品は環境によって映像体験が大きく左右されますので、できるだけ大きなスクリーンを持つ、最新設備の映画館で観るに限ります。
実話ベースの山岳映画ですから、ストーリー的にはエベレストに登って下山するだけ。その上、描かれている話が非常に有名な出来事だそうで、背景や人物像の説明がほとんどないという不親切な作品。いくら出演者が素晴らしくても、2Dの小さな画面では興醒めです。大きな劇場で観る以外、選択肢のない映画だと思います。
で、観た感想はといえば、スゴイ!のひと言です。3D映画が嫌いな私も、今回ばかりは3Dの威力に感服しました。序盤に吊り橋を渡るシーンがあるのですが、その他愛ない映像で早くも身体が強ばるほど。その後、クレパスに梯子をかけて越えるシーンや、絶壁をロープを伝って進んで行くシーンなど、いちいち肩に力が入ってしまい、後でぐったりしました。
本作のベースになっているのは、1996年5月10日の大量遭難。エベレスト登山が、ベテラン登山家がガイドする商業公募隊で行われるようになり、登山者の裾野が広がった時期だそうです。商業公募隊というのは、要するに登山のパッケージツアー、グループツアーですから、参加資格に一定の条件があるとはいえ、各人の技量はバラバラ。その上、人数が増えたせいで渋滞し、時間の浪費=体力の消耗を招きます。
また本作で描かれた公募隊の場合、1人あたり6万5000ドル(96年前半は1ドル104〜108円)の料金を払って参加していますから、多少気候が崩れても、頂上を目前に撤退するというのはなかなかできるものではありません。それが8人の死亡者を出すという大事故に繋がっていくわけで、2014年4月18日に雪崩で16人のシェルパ(ネパール人ポーター)が死亡するまで、エベレスト最大の遭難事故だったそうです。
5月10日の登頂を目指したチームは3つあり、その他のチームも登場するのですが、本作ではニュージーランド人のロブ・ホール率いるアドベンチャー・コンサルタンツ隊の顧客を中心に、マウンテン・マッドネス隊を率いる米国人のスコット・フィッシャーとロシア人ガイドのアナトリ・ブクレーエフを交えて描いていきます。
ロブ・ホールの顧客で重要なのは、郵便局員のダグ・ハンセン、編集者のジョン・クラカワー、テキサス出身のベック・ウェザーズの3人。ダグ・ハンセンは、金持ちが多い公募隊には珍しい庶民で、その前年もツアーに参加しながら登頂を断念していることから、ロブ・ホールは何とか今回は成功させてやりたいと気に掛けています。
ジョン・クラカワーは、アウトドア雑誌に記事を載せて宣伝することを前提に参加している登山家で、本作の原作となった体験記の著者です。ベック・ウェザーズはダラスの医者で熱心な共和党支持者。ちょっとネタバレになってしまいますが、瀕死の状態で奇跡の生還を果たす人物です。
彼は最終的にヘリコプターで運ばれていくのですが、このような高所には気圧の関係で着陸が難しいそうで、他の登山者の支援で標高6,000mまで下山したとのこと。ちなみに、2005年にはユーロコプター社のAS350 B3というヘリコプターがエベレスト山頂(標高8,848m)への着陸を成功させたそうなので、この遭難事件が10年後だったら第4キャンプから搬送できたかも知れません。
その他、ロブ・ホールのチームには女性登山家の難波康子さんが参加していました(彼女の他、フィッシャーのチームにはSandy Hillという派手な女性とCharlotte Foxという女性の登山家がいます)。登頂に成功した彼女が、頂上で思わず手を合わすあたり、脚本にあったのかアドリブなのかわかりませんが、日本人らしいリアリティがあってちょっと感動しました。
ということで、冒頭で記したように、映画ではこのような人物像はほとんど説明されませんので、予め公式サイトやWikiで登場人物について調べておいた方が、心置きなく楽しめると思います。
なお、主な出演者としては、ロブ・ホール役でジェイソン・クラーク(Jason Clarke)とその妻ジャン役で「はじまりのうた」のキーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)、ベック・ウェザーズ役で「インヒアレント・ヴァイス」のジョシュ・ブローリン(Josh Brolin)とその妻ピーチ役で「美しい絵の崩壊」のロビン・ライト(Robin Wright)、ダグ・ハンセン役で「ウィンターズ・ボーン」のジョン・ホークス(John Hawkes)、ベースキャンプマネージャーのヘレン役で「オレンジと太陽」のエミリー・ワトソン(Emily Watson)、スコット・フィッシャー役で「複製された男」のジェイク・ギレンホール(Jake Gyllenhaal)が出ています。
公式サイト
エベレスト3D(Everest) instagram
[仕入れ担当]