映画「はじまりのうた(Begin Again)」

0 とってもいい映画です。ストーリーも他愛ないし、映像が凝っているわけでもないのですが、エンドロールが流れたとき、観にきて良かったな、と素直に思える作品だと思います。

監督は2007年の「ONCE ダブリンの街角で」がヒットして注目を集めたジョン・カーニー(John Carney)。アイルランドのロックバンド、ザ・フレイムス(The Frames)のベーシストだった人ですが、ミュージックビデオを撮ったりしているうちに映像の仕事に移行して映画監督になった人です。とはいえ元ミュージシャン、「ONCE・・・」に続いて本作も音楽をテーマにした作品で、監督自身も2曲の挿入歌を作っています。

映画の幕開け、キーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)演じるグレタが、友人のスティーヴに促されて歌う"A Step You Can’t Take Back"(YouTube)も監督が作った曲。これがなかなか雰囲気のある曲で、出だしから映画の世界に引き込まれていきます。

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グレタとスティーヴ、グレタの恋人デイブは、大学で一緒にバンド活動をしていた仲間。デイブが歌った映画の主題歌がヒットし、グレタと2人でNYに出てきたのですが、デイブがスタッフの女性に惹かれたことで2人は破局を迎えてしまいます。

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傷心のグレタが、ストリートで歌っていたスティーヴに会いに行き、彼のライブを聞きに行ったのがロウワー・イーストサイドのアーレンズ・グローサリー(Arlene’s Grocer)で、そこでスティーヴに呼ばれてステージに上がって歌うのが冒頭のシーンです。

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一方、マーク・ラファロ(Mark Ruffalo)演じるダンは、20年ほど前に一世を風靡した音楽プロデューサー。訳あって妻と娘と別居していて酒浸りの毎日です。仕事も今ひとつで、最近の音楽を受け入れられなくて、結局、自らが設立したレコード会社から追い出されてしまいます。そんな最悪の気分で飲みに立ち寄ったのが、アーレンズ・グローサリー。グレタの弾き語りを聴いているうちにアレンジのアイデアが沸いてきて、すかさず彼女に契約を持ちかけます。

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しかし、レコード会社を仕切っているサウルは、デモテープを作る資金を出しません。そこでダンは、スタジオを借りるのではなく、NYの街角で演奏して録音しようと考えます。ラッパーのトラブルガムに会いに行って、昔のよしみでミュージシャンを貸して貰い、ミートパッキング地区やセントラルパーク、地下鉄のホームなど、さまざまな場所で録音を進めていきます。

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この映画の素敵なところは、このゲリラ演奏を通じて人々が心を通わせ、それぞれが抱えた傷を癒していくところ。ちょっとネタばれになっていまいますが、ダンの一人娘のバイオレットがグレタに誘われて演奏に加わり、"Tell Me If You Wanna Go Home"(YouTube)という曲のギターソロを弾くシーンはなかなか感動的です。

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そのバイオレットを演じたのが「トゥルー・グリット」の少女、ヘイリー・スタインフェルド(Hailee Steinfeld)。

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彼女の母親、ダンの別居中の妻を演じたのが「マルコヴィッチの穴」や「カポーティ」、最近では「キャプテン・フィリップス」に出ていたキャサリン・キーナー(Catherine Keener)。2人とも雰囲気が役にぴったりでした。

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そしてグレタを支える友人のスティーヴを演じたのが「ワン チャンス」でポール・ポッツ役だったジェームズ・コーデン(James Corden)、グレタの恋人デイブを演じたのが、マルーン5のアダム・レヴィーン(Adam Levine)。

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彼がコンサートシーンで歌う"Lost Stars"(YouTube)はアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされている曲ですが、さすがに歌いっぷりも貫禄十分です。ちなみに作曲したのはニュー・ラディカルズのボーカルだったグレッグ・アレキサンダー(Gregg Alexander)で、この映画の音楽監督を務めています。

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ついでに記せばトラブルガムを演じたのは、本物のラッパーのシーロー・グリーン(CeeLo Green)。グレタとダンがラーメンレストランで食事するシーンで後ろの席にいる白髪の女性は劇作家のシャーマン・マクドナルド(Sharman Macdonald)。キーラ・ナイトレイのお母さんです。

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ともかくNYが素敵に見える映画です。これを観たら、久しぶりに行ってみたくなりました。

公式サイト
はじまりのうたBegin Again

[仕入れ担当]