映画「ワンチャンス(One Chance)」

0 コレド室町の新しい映画館に入ってみたくて、あまり期待せずに観に行ったのですが、これがなかなか良い作品でした。英国のオーディション番組で優勝し、オペラ歌手としてデビューした携帯電話ショップの従業員、ポール・ポッツ(Paul Potts)の半生を描いた実話ベースの映画です。

オープニングで描かれるのは、いじめられっ子だった少年時代のポール。育ったのが港湾都市ブリストルの郊外(Fishpondsのそば)ですから、きっとマッチョな気風が強くて、聖歌隊で歌っているちょっと太めな男の子は標的になってしまうのでしょう。

そんなわけでいつも自信のないポールでしたが、歌っているときだけは自信を持てたと言います。大人になって働きながらも、オペラ歌手への夢は捨てていませんでした。

そんな折、恋人となるジュルズに出会います。

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彼女に励まされてイタリアに短期留学。ヴェネチアでオペラを学び、それなりに成長するのですが、憧れのパヴァロッティから物怖じする性格にダメ出しされ、イタリアで培った自信を失って帰国します。

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さらに、甲状腺の腫瘍が見つかって声が出なくなったり、交通事故に遭ったり、さまざまな不運に見舞われて歌を諦めかけますが、妻となっていたジュルズに再び背中を押され、2007年にオーディション番組の「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出場。

プッチーニ「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)」を歌い、聴衆を魅了して優勝を勝ち取ります。

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その後、番組の名物審査員であるサイモン・コーウェル(Simon Cowell)のレコードレーベルに所属して、オペラティック・ポップの歌い手として成功を収めていくことになります。

言ってみれば単純なサクセスストーリーですが、観る側の満足度を高めているのは、この夫婦の仲の良さがきっちり描かれているからでしょう。ポールを信じて励ますジュルズの姿には気持ちが引き込まれます。

たとえば、ジュルズとの初めてのデート。女性に縁のないポールですから、ネットで知り合ったジュルズが本当に女性なのかということさえ、自信がない状態です。彼女がきちんとした女性だったことに大喜びしている純朴なポールに、ジュルズも誠実に応えていこうとします。

そのジュルズを演じたのがアレクサンドラ・ローチ(Alexandra Roach)。どこかで見た人だと思ったら、メリル・ストリープの「マーガレット・サッチャー」で、食料品店の娘だった若い頃のマーガレットを演じた人なのですね。

ポールを信じ続けたもう一人の女性、母親のイヴォンヌ・ポッツを演じたジュリー・ウォルターズ(Julie Walters)との語りは、愛に溢れていて特に良い感じでした。 

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そしてポール・ポッツを演じたジェームズ・コーデン(James Corden)。ポールが「ブリテンズ・ゴット・タレント」で優勝したシーンは、現在もYoutube(こちら)で視聴できますが、とてもよく似ていてびっくりしました。

映画のイメージに違わず、実際のポール・ポッツ氏もとても誠実な方で、東日本大震災の際も、直後に予定されていた公演をキャンセルせずに来日し、心のこもったスピーチと歌を残しています(そのときの動画はこちら)。先月も自らのfacebookに被災者への思いを記していました。

そんな人物像を知って映画をご覧になると、また違った印象を受けるかも知れませんね。

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公式サイト
ワンチャンス

[仕入れ担当]