このブログでは、モナドにいらっしゃる映画好きのお客様向きの映画を紹介しているのですが、本作はちょっと対象がズレているかも知れません。私もそれほど強い関心を持っていたわけではなく、主役を演じたトム・ハンクス(Tom Hanks)の評判が良かったので観にいったという感じです。
実際にあった海賊事件を、「ブラディ・サンデー」や「グリーン・ゾーン」のポール・グリーングラス(Paul Greengrass)監督が映画化したもの。この監督にとっては「ユナイテッド93」に続くノンフィクション作品となります。
トム・ハンクスが演じたのは、ソマリアの海賊に襲われる米国籍コンテナ船のリチャード・フィリップス船長。船長の手記に基づく映画ですので、最終的に救出されることはわかっていますが、それでもトム・ハンクスの抑制が効いた演技と、ポール・グリーングラスらしい緊迫した映像のおかげで、最後まで退屈させません。
映画の序盤に、フィリップス船長がコンテナ船に乗船するため、妻を乗せた車で自宅から空港に向かうシーンがあります。車内で「この不安定な時代に子どもたちはどう生きていくべきか」といったありきたりな会話が交わされるのですが、それがそのまま、仕事もなく、海賊に志願して収入を得ようとするソマリアの若者たちに重なっていきます。
その一部である4人の痩せ細った若者が、オンボロ漁船でコンテナ船を襲い、フィリップス船長が捕らわれて人質になります。4日間の漂流の末、米国海軍のSEALs(特殊部隊)に救出されるのですが、それまでの一部始終が大掛かりな海上ロケで描かれていきます。
一番の見どころは、最後の救出シーンでしょう。海賊であるソマリアの若者たちと微妙な距離感で接して殺されずにきた船長が、救出された瞬間に見せるアンビバレンツな感情。トム・ハンクスがアカデミー賞を獲るかも知れないと言われている演技です。わたし自身、昔の作品はともかく、最近は「ダ・ヴィンチ・コード」と「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」でしか彼の演技は観ていませんので良し悪しがわかりませんが、確かに力のこもった演技であることは確かです。
その後、軍艦に移送されて治療を受けるシーンで登場する看護婦は、本物の軍属の医療スタッフだそう。実際に救助された場合と同じ対応をしたということですが、ちょっと喋り過ぎな感じで、ショック状態のときに、あんなに早口で質問されたら堪らないなと思いながら観ていました。
それから、面白いと思ったのは、海賊が身代金の交渉をするとき、必ず「自分たちはアルカイダではない」と言うところ。海賊行為はビジネスだと言うんですね。実際のところ、身代金が誰の手に渡っているのかわかりませんが、政治的な理由で処刑したりしないようです。とはいえ、この海域を通る船にとって脅威であることに変わりありませんが…。
公式サイト
キャプテン・フィリップス(Captain Phillips)
[仕入れ担当]