ミニシアター系が続きましたので、今回は一般的な映画をご紹介。
第32代米国大統領フランクリン・ルーズベルト(Franklin Delano Roosevelt)、通称FDRの裏話を、不倫関係にあった従妹のマーガレット・サックリー、通称デイジーの日記や書簡を元に構成したコメディタッチの作品です。
宣伝では恋愛的な要素が強そうに見えますが、あくまでも、英国王夫妻との面会時の逸話が主題です。ハドソン川のハイドパークという原題も、英国を代表する王立公園と同じ地名を持つNY郊外の土地、つまりFDRの住居として米国で広く知られている場所を、英国王夫妻が訪問するという面白さを示してるわけです。
FDRを演じたのは、このブログでも「リミッツ・オブ・コントロール」や「ムーンライズ・キングダム」を取り上げているビル・マーレイ(Bill Murray)。
彼の演技力のおかげもあって、名門の出身にも関わらず、庶民的な打ち出しで人気を集めたFDRの姿を垣間見た気分にさせてくれます。大統領が従妹と不倫というと非常にスキャンダラスな印象がありますが、FDRにはデイジーや映画に出てくる秘書以外にも複数の愛人がいたようで、そういうタイプの人だったようです。
対するその妻、「17歳の肖像」「ゴーストライター」「ハンナ」のオリヴィア・ウィリアムズ(Olivia Williams)が演じたエレノア・ルーズベルト(Eleanor Roosevelt)は、この映画では気まぐれで憂鬱なファーストレディとして描かれていますが、実際はとても立派な女性です。
彼女の秘書と不倫関係に陥ったFDRを受け入れて危機を乗り越えたのも、ポリオで政治生命を失いそうになったFDRを支えて大統領に当選させたのも、FDRの死後に国連大使として人権活動を広めたのも、すべて彼女の功績。
まぁ映画のテーマからいえば、自立心の強いエレノアに疲れて、従順なデイジーに惹かれていったという線で進めたかったのでしょうが、これではエレノアがちょっと不憫です。ちなみにエレノアはセオドア・ルーズベルトの姪ですので、デイジー同様、FDRとは親戚関係にあります。
そして、この映画の一番の見どころである英国王夫妻の訪問シーン。映画「英国王のスピーチ」で描かれていた吃音のアルバート王子、後のジョージ6世を演じたサミュエル・ウェスト(Samuel West))、王妃エリザベスを演じた「思秋期」「マーガレットサッチャー」のオリヴィア・コールマン(Olivia Colman)の2人が繰り出す、いかにも英国人といったセリフの数々が笑えます。
監督を務めた「ノッティングヒルの恋人」のロジャー・ミッシェル(Roger Michell)に、出演者のオリヴィア・ウィリアムズ、サミュエル・ウェスト、オリヴィア・コールマンを併せた4人がオックスブリッジ出身という映画ですから、この手の英国風ユーモアはお手のものでしょう。
ついでにいえば、実はこの作品、米国史を描いていながら、ハリウッド映画ではなく、歴とした英国映画。撮影地もロンドンだそうです。
そんなわけで、皮肉の効いた英国風ユーモアを、クスッと笑いながら観るタイプの映画です。日本人としては憎きFDR(原爆とか、マンザナーとか)かも知れませんが、あまり深く考えず、気楽にご覧になると良いと思います。
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