やや旬を過ぎた印象もありますが、今年の米国アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞の他、主演のコリン・ファース(Colin Firth)が主演男優賞を受賞した話題作です。
吃音で喋るのが苦手だったアルバート王子が、兄のデイヴィッド王子=エドワード8世の退位によって、ジョージ6世として王位に就くことになり、吃音を乗り越えて立派な王になろうとする物語。吃音の治療を行ったライオネル・ローグの話に基づく実話ベースの映画です。
幼少の頃、X脚や左利きなどを厳しく矯正され、精神的な傷を負ったことが吃音の原因だと単純化され過ぎているような気もしましたが、ライオネル・ローグの視点から描かれた原作ですので、これは仕方ないのかも知れません。
それをのぞけば、映像も美しいし、ストーリーもシンプルだし、子どもからお年寄りまで誰もが楽しめそうな映画です。といっても、治療の過程で"f-word"が使われている関係で、米国ではR指定で公開されたそうですが……。
この映画の一番の見どころは、コリン・ファースや妃役のヘレナ・ボナム=カーター(Helena Bonham Carter)をはじめ、ライオネル・ローグ役のジェフリー・ラッシュ(Geoffrey Rush)、エドワード8世のガイ・ピアース(Guy Pearce)といった俳優陣の演技力でしょう。
ヘレナ・ボナム=カーターが演じたQueen Elizabethは、2002年に亡くなるまで英国民からQueen Mumと呼ばれて親しまれていた、現女王エリザベス2世の母親ですが、気が強く大らかな性格をとても上手に表現していたと思います。
もちろん、コリン・ファースの熱演は言うまでもありません。国王のスピーチについて、長女のエリザベスが「最初は不安だったけど後半は良かった」と言うシーンがありますが、BBCのサイトにあるジョージ6世の実際のスピーチを聞いた印象もまったくその通り。去年のシングルマン(A Single Man)といい、いま最も充実している英国人俳優といった気がします。
英国映画らしい、美しい田園風景も素敵でした。映画館の大きなスクリーンで観るに値する映画だと思います。
公式サイト
英国王のスピーチ(The King’s speech)
[仕入れ担当]