昨年度のベルリン国際映画祭で話題を集めたロマン・ポランスキー(Roman Polanski)監督の最新作。最初から最後までハラハラドキドキさせられる本格的サスペンス映画です。
元英国首相の自伝の執筆を依頼されたゴーストライター。仕事は、事故死した前任者の原稿を引き継いで仕上げること。高額なギャラに驚きつつも、出版エージェントに押し切られ、元首相が滞在している米国のマーサズ・ヴィニヤード島に向かいます。
ちなみにこの島(実際は独ズィルト島で撮影したそうですが…)、晩年のジャックリーヌ・オナシスが住んでいたり、ビル・クリントンが大統領当時、家族で夏の休暇を過ごしたり、政治的なイメージがある場所。また元首相の自伝のタイトルは“My Life”で、ビル・クリントンの自伝と同じタイトルです。
マーサズ・ヴィニヤード島に向かう途中の空港で、元首相が在職中にスパイを米国に違法に引き渡した疑いがあり、国際司法裁判所に告発されたというニュースを見かけます。厳重に警備された邸宅に着くと、元首相の妻、元首相と愛人関係にあると思われる女性秘書に迎えられ、不穏な空気を感じ始めます。
元首相をインタビューするうちに数々の疑念がわきおこり、また前任者が自室に隠していた資料を見つけ、さらに島の住人の話から前任者の死を不審に思うようになり、といった感じで少しずつ秘密のベールが剥がされていきます。
結局、元首相とCIAの接点を疑いながら前任者の足跡を追ううちに、大きな陰謀が見え始めるのですが、ちょっとしたどんでん返しもあって、エンドロールまで気が抜けません。
ゴーストライターを演じるのはユアン・マクレガー(Ewan McGregor)。小さな正義心が大きな災いを呼び込んでしまう巻き込まれ型サスペンスの主人公を、情けない表情で好演しています。
また、元首相を演じているピアース・ブロスナン(Pierce Brosnan)の尊大な態度も、最後まで観客を翻弄し続けます。
元首相の妻を演じたオリヴィア・ウィリアムズ(Olivia Williams)は、「17歳の肖像」で先生役をしていたケンブリッジ卒の女優さんですが、この映画ではオックスフォード卒という設定で登場。実はこのあたりもキモになっていたりして、細かな部分までよく作り込まれた映画です。
ということで、なかなか一筋縄ではいきません。サスペンス映画がお好きな方には強くお勧めします。
公式サイト
ゴーストライター(The Ghost Writer)
[仕入れ担当]