映画「ハンナ(Hanna)」

Hanna0 「プライドと偏見」「つぐない」「路上のソリスト」と文芸作品のイメージが強かったジョー・ライト(Joe Wright)監督が、「つぐない」や「ラブリーボーン」で注目を集めた演技派の少女、シアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan)を主演に据えて撮ったアクション映画です。

フィンランドの人里離れた森の中で、元CIAエージェントの父親に育てられたハンナ。百科事典を教材に知識を詰め込み、アラビア語やスペイン語など数カ国語を習得すると同時に、戦闘能力とサバイバル能力を鍛え抜かれます。

冒頭のシーンで、ハンナが弓でヘラジカを射止めるのですが、急所を外して瀕死のヘラジカに“I’ve just missed your heart”と謝りながらとどめをさします。そんなハンナを後ろから急襲し、油断するなと戒める父親。ヘラジカを自分で持ち帰って処理するように言いつけられたハンナは、ソリで運んで内臓を素手で処理します。

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この父娘がこのような暮らしをしているのは、ハンナの母を銃弾3発で斃したCIAエージェントに復讐するため。十分に訓練を積んだハンナは、父親から教えられた装置を操作して信号を送出し、生まれて初めて外の世界に出ることになります。

この後は、ハンナが復讐を誓う相手(=ハンナを捕らえようと狙う組織)との壮大な鬼ごっこが続き、「ラン・ローラ・ラン(Lola rennt)」ばりに走りまくるのですが、これが不思議と退屈しません。

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その理由のひとつは、この映画がモロッコのオアシスの町から、スペインのコルドバ(Córdoba)、南フランスを経てドイツのベルリンに至るロードムービーになっていて、各地の情景が美しく撮られていること。たとえばモロッコではラクダ市場、コルドバではヒターノ(ジプシー)のダンス、南フランスでは運河橋を運航する船といった具合に、ちょっとした観光気分に浸れます。

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また、父親役にエリック・バナ(Eric Bana)、復讐相手にケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)と、力のある俳優女優が周りを固めているのも魅力です。特にケイト・ブランシェットの上手さは際立っています。さらにいえば、「ゴーストライター」のオリヴィア・ウィリアムズ(Olivia Williams)が、今回はケンブリッジ卒という役柄で出ているのですが、これがまた良い味を出しています。

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もちろん主演のシアーシャ・ローナンも、持ち前の演技力と、ちょっと浮世離れした「不思議ちゃん」キャラで魅力全開。「どこから来たの?」と問われて「森から」と答えるリアル森ガールですし、ある意味、谷根千で受けるキャラかも知れません。

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音楽がケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers)というのも、好きな人には刺さるポイントかと思います。

公式サイト
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[仕入れ担当]