映画「ハドソン川の奇跡(Sully)」

00_2 クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)監督、トム・ハンクス(Tom Hanks)主演という話題作です。

アメリカン・スナイパー」のブログでも書いたように、生真面目さが私の体質に合わないと思いながら、結局、観てしまうイーストウッド作品。今回は「ブリッジ・オブ・スパイ」「キャプテン・フィリップス」「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のトム・ハンクスとの組み合わせですから、生真面目さが二乗になっています。

内容はといえば、2009年1月15日に起きたUSエアウェイズ1549便の事故。離陸直後のバードストライクで両方のエンジンが停止しながらも、ハドソン川に不時着し、乗員乗客が無事救出されたという実話です。当時のNY州知事が「ハドソン川の奇跡」(Miracle on the Hudson)と呼んだことからこの邦題が付けられたのでしょう。

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しかし、着水させた機長は「これは訓練のたまもので、一か八かの賭けに出て偶然うまくいったのではない、だから奇跡と呼んでくれるな」とマスコミに抗議したといいます。なぜかというと、事故の後、着水の判断の適否を米国家運輸安全委員会(NTSB)が審議していたからで、この映画ではその経緯が主題になります。原題が、チェスリー・サレンバーガー(Chesley Sullenberger)機長の愛称であるサリー(Sully)なのは、おそらくそういう理由です。

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主な登場人物は機長の他、副機長のジェフ・スカイルズ (Jeff Skiles)、機長の妻のローリー・サレンバーガー(Lorraine Sullenberger)で、それぞれ、トム・ハンクス、「ラビット・ホール」のアーロン・エッカート(Aaron Eckhart)、「私が愛した大統領」のローラ・リニー(Laura Linney)が演じています。

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イーストウッド監督にしては短めの96分の作品とはいえ、事故そのものはわずか10分間の出来事。15時25分にラガーディア空港を飛び立ってすぐバードストライクに遭い、15時30分に着水、その5分後には最初の救助隊が到着しています。事故の再現映像だけでは間が持ちません。

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映画で克明に描かれるのは、事故機を無事に着水させ、マスコミからヒーローともてはやされながら、無謀な賭けをして乗客を危険にさらしたのではないかと疑われる機長の姿です。機長の手記をベースにした映画ですから、最終的には機長の判断が正しかったと結論づけられるのですが、NTSBがどのように検証し、機長がどのように正当性を主張したか、そのあたりが見どころになります。

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ですから、トム・ハンクスは終始しかめっ面です。アーロン・エッカートやローラ・リニーの表情も苦渋に満ちています。それに対して、NTSBのメンバーの印象がとても薄っぺらで、イーストウッド監督らしいといえばそうなのですが、最初から白黒がはっきりしています。

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ということで、物語を楽しむというより、大ニュースになった事故の背景を知るという映画だと思います。

なお墜落シーンのCGがリアルですので、インフライトムービーでの鑑賞はお勧めできません。映画館かご自宅でご覧になるのが無難です。

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公式サイト
ハドソン川の奇跡Sully

[仕入れ担当]