映画「ネオン・デーモン(The Neon Demon)」

00 2016年のカンヌ映画祭のコンペティション部門に出品され、評価が大きく二分されて話題となった映画です。前々作「ドライブ」で監督賞を受賞しているものの、前作「オンリー・ゴッド」でも賛否が割れましたので、このままカンヌの寵児としてもてはやされるのか、それとも問題児とされていくのか、興味深いところです。

良くも悪くもニコラス・ウィンディング・レフン(Nicolas Winding Refn)らしい作品だと思います。コントラストの強い色彩表現と、クリフ・マルティネス(Cliff Martinez)の強烈なエレクトロニック・ミュージックの組み合わせがとてもスタイリッシュ。スプラッターな映像も洒落ていますので、タランティーノ的な血しぶきがお好きな方にはお勧めできそうです。

ただ、ちょっと冗長な印象も否めません。監督が撮りたかった映像なのかも知れませんが、ストーリー的に重要でない部分をやたら引っ張るので、間延びして緊張感が途切れてしまいます。私としてはサイコホラー的な作品をイメージしていただけに、ややまわりくどいように思えました。

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また、本作はエル・ファニング(Elle Fanning)主演ということで、この監督ならロリコン的な視点を持ってくるだろうと思っていましたが、それのみならずネクロフィリアやカニバリズムまで持ち込んできますので、そういった点がダメな人も多そうです。ホラー的な恐さよりエログロっぽさが際立つ作品です。

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物語は、田舎町からLAに出てきたモデル志望の少女ジェシーが、ネットで知り合ったディーンに宣伝材料用の写真を撮ってもらっているシーンからスタート。ソファーに横たわるジェシーの首から血が流れる設定で撮影しているのですが、血の赤を際立たせる青いドレスはエンポリオ・アルマーニだそう。モデル業界が舞台ということで衣装にも凝っていて、中盤ではサン・ローランのホルターネックのドレスも登場します。

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撮影が終わり、楽屋で血糊を落としているときにメークアップアーティストのルビーと知り合います。彼女に誘われて出掛けたパーティで知り合うのが、プロのモデルとして活躍しているサラとジジ。ジェシーとこの3人がストーリーの軸となる登場人物です。

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写真を持ってモデル事務所に行くと、経営者のロバータ・ホフマンから、こんな素人写真ではダメだと言われて、ジャックという有名カメラマンを紹介されます。彼はジェシーをひとめ見るなりスタジオにいた全員を追い出し、彼女に服を脱ぐように命じると首筋に金粉を塗りつけて撮影を始めます。駆け出しのディーンも大御所のジャックも、グリッターな演出でジェシーを撮ろうとする点は同じです。

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そしてオーディション。ジェシーとサラが同じ組で審査されるのですが、キャリアのあるサラが落とされたのに対し、ジェシーはあっさり合格します。ここで呆けた表情でジェシーに見とれるロリコン気味のデザイナーを演じているのが「ジンジャーの朝」でエル・ファニングの父親役だったアレッサンドロ・ニヴォラ(Alessandro Nivola)。「ココ・アヴァン・シャネル」ではボーイ・カペルを演じていたイタリア系の色男です。

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ちなみに落とされたサラを演じているアビー・リー・カーショウ(Abbey Lee Kershaw)はシャネルなどで活躍した本物のモデル。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で5人の妻の1人を演じたことから、女優としてのキャリアをスタートさせたそうです。ついでに記せば、ルビー役は「インヒアレント・ヴァイス」でサックス吹きの奥さんを演じていたジェナ・マローン(Jena Malone)、ジジ役は「Re-LIFE〜リライフ〜」でヒュー・グラントを誘う女子学生を演じていたベラ・ヒースコート(Bella Heathcote)です。

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これ以外に、ジェシーが泊まっているモーテルの管理人ハンク役でキアヌ・リーヴス(Keanu Reeves)が出てきます。これがどうでもいい役のようでいて、物語が大きく動きだす起点になる重要な役でもあります。近作では「50歳の恋愛白書」ぐらいしか観ていないので、彼の演技をよく知らないのですが、怪しげな雰囲気が役どころにあっていて良い感じでした。

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ということで、儚げな美しさで周囲の男女を魅了していた少女が、モデルとしての成功を掴むと同時に慢心して妬まれていくという物語です。実年齢と同じ16歳の少女を演じたエル・ファニングの変化が最大の見どころだと思います。

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公式サイト
ネオン・デーモンThe Neon Demon

[仕入れ担当]