映画「Re-LIFE〜リライフ〜(The Rewrite)」

00 監督が「トゥー・ウィークス・ノーティス」「ラブソングができるまで」のマーク・ローレンス(Marc Lawrence)、主演がこの両作でも主役を務めたヒュー・グラント(Hugh Grant)ということで、ロマンティックコメディ(rom-com)の王道を往く1本です。

誰でも気軽に楽しめる作品だと思いますが、ハリウッドで1本ヒットしたきり鳴かず飛ばずの脚本家が大学で教えることになるという設定ですから、映画ネタと文学ネタが満載です。そのあたりの知識があると、笑いのポイントがぐっと増えると思います。

冒頭は映画の制作会社にプレゼンしに行った主人公が、かたっぱしから断られるシーン。それに被さるように流れてくる曲はマデリン・ペルー(Madeleine Peyroux)のDon’t Wait Too Long。軽快で洒落た曲調が哀愁を誘うだけでなく、歌詞が状況にうまく重なっていて、個人的にはこの立ち上がりだけでも二重丸です。こういう映画は感覚的に合うか合わないかですから、選曲センスは重要ですよね。

ヒュー・グラント演じる主人公は、15年前に映画「間違いの楽園(Paradise Misplaced)」の脚本でアカデミー賞を受賞したキース・マイケルズ。しかしそれ以降、ヒット作に恵まれず、自宅の電気も止められそうな状況に追い込まれています。背に腹は変えられず、エージェントに勧められた大学講師の仕事を受けることに決め、陽光降り注ぐカリフォルニアから、どんより曇った東海岸のビンガムトンに飛びます。

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講義を持つことになるのは公立大学のニューヨーク州立大学ビンガムトン校(Binghamton University)。しかし到着早々、女子学生カレンと親密な関係になり、また懇親会では、学部の実力者メアリー・ウェルドン教授に向かって彼女が敬愛するジェーン・オースティンをこき下ろすという失態を演じます。ちなみに、ここでは「キック・アス」に絡めた軽口を連発して顰蹙を買い、後で彼女に謝罪するときに持参するのは、「エマ(Emma)」を下敷きにした青春コメディ「クルーレス」といった具合に映画ネタが散りばめられます。

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本来は学生が提出した脚本を読んで受講者を選ぶことになっていましたが、それは面倒だとばかりに、SNSに掲載された学生たちの顔写真を見て、好みのタイプの女子学生と冴えないタイプの男子学生を合計10人選びます。そして最初の講義では、1ヶ月かけて脚本を書くという課題を出して休講にしてしまいます。

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選び出した生徒の他に、購買部で働きながら大学に通うシングルマザーのホリーがクラスに加わり、彼らとの交流を通じてキースが変化し、自分の人生を書き換えていくわけですが、授業中にキースと個性的な生徒たちが繰り広げる映画談義も見どころの一つ。

たとえば「スター・ウォーズ」マニアの男子生徒がいたり、「ダーティ・ダンシング」が最高というキャピキャピな女子生徒に対して、タランティーノ、クロサワ、ベルイマンしか認められないと言い返す中華系の女子生徒がいたり・・・。

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また、教師たちも個性的で、上司にあたる学科長のドクター・ラーナーは、海兵隊出身のコワモテながら家族の話をして涙を流すという人情家。同僚のジムはことあるごとにシェークスピアを引用する変わり者で、愛犬の名前もヘンリー四世(Henry IV)。

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もちろんメアリーからは「分別と多感(Sense and Sensibility)」や「高慢と偏見(Pride and Prejudice)」絡みのセリフが飛び出します。後半には“生徒たちは私のことを(分別と多感の)エリノアだと思っている”と発言するシーンもあり、これはきっとヒュー・グラントがアン・リー監督「いつか晴れた日に」でエドワードを演じたことに引っかけているのでしょう。

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主な出演者としては、シングルマザーのホリーを演じたマリサ・トメイ(Marisa Tomei)は「レスラー」の相手役だった人。メアリー・ウェルドン教授を演じたアリソン・ジャニー(Allison Janney)は「ヘルプ」のお母さん役でしたね。また「とらわれて夏」「セッション」のJ・K・シモンズ(J.K. Simmons)が学科長ドクター・ラーナーを演じています。

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そしてヒュー・グラント。劇中、PCで観る動画は「フォー・ウェディング」で1994年ゴールデングローブ賞を受賞したときの自身の映像(YouTube)だそう。 さすがに若いですね。最近「コードネーム U.N.C.L.E.」で久しぶりに観たばかりでしたが、こういうロマンティックコメディの方が向いているような気がしました。

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公式サイト
Re-LIFE〜リライフ〜

[仕入れ担当]