映画ブログはモナド定休日の定番メニューなのですが、もたもたしているうちに終了してしまいそうな映画について、いくつかGW中に記しておこうと思います。
この「ヘルプ」はエマ・ストーン(Emma Stone)主演の人間ドラマ。彼女は、アンドリュー・ガーフィルド(Andrew Garfield)主演の「アメイジング・スパイダーマン」のヒロイン役に抜擢されて話題になりましたが、それよりも「ソーシャル・ネットワーク」や「わたしを離さないで」といった名作で着実に地歩を固めてきたガーフィルドとの同棲がゴシップ誌を賑わしている人、といった方が正確かも知れません。
映画ファンとしては、この「ヘルプ」でアカデミー助演女優賞を獲ったオクタヴィア・スペンサー(Octavia Spencer)の演技が気になるところ。彼女と、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」にも出ていたヴィオラ・デイヴィス(Viola Davis)の2人が重要な役を演じています。
原作は1960年代の黒人メイド(=アフリカ系アメリカ人)をテーマにした2009年の小説で、キャスリン・ストケット(Kathryn Stockett)のデビュー作です。Daily Mailによると、脚本・監督のテイト・テイラー(Tate Taylor)とは幼なじみだそうで、共にこの物語の舞台となるミシシッピ州ジャクソンの出身だそう。
映画にケネディ大統領の葬儀が出てきますので、1963年の終わりから、公民権法が制定される1964年にかけての時代。都市部では公民径運動が盛り上がり、ケネディのようなリベラルな大統領が誕生していましたが、黒人差別が色濃く残る南部ではジム・クロウ法が金科玉条のように守られ、黒人が白人と同じトイレを使うことさえ許されない状況です。
エマ・ストーン演じるジャーナリスト志望のスキーターは大学を卒業して地元に帰ってきたばかり。自分を育ててくれた黒人メイドを第二の母親だと思っている彼女は、差別を疑問に思い、黒人メイドたちの実態をまとめた本を書いて世に問おうとしますが、もちろん誰もインタビューには応じてくれません。
そんな中、オクタヴィア・スペンサー演じるメイドが雇い主のトイレを使ったことで解雇され、ヴィオラ・デイヴィス演じるメイドと一緒にスキーターに協力して本を完成させるという、公民権法制定に向かう過渡期の物語です。
日本人としては、なかなかピンときませんが、たかだか50年前の米国のお話です。映画にもなった「リリィ、はちみつ色の夏」など、この手の小説が何度もベストセラーになりながら、いつまでたっても一部の人たちは変われない米国。
2月にフロリダ州で17歳の黒人少年が射殺された事件でも、当初、容疑者は正当防衛として釈放されていましたし、世論の高まりを受けて逮捕された後も、彼の保釈金として20万ドルを超える寄付が集まったそう(実際の保釈金は15万ドル)。一方、被害者の遺族の「Justice™ For Trayvon Martin」には28000ドル程度しか集まっていないようで……。
悲しい現実ではありますが、映画にはスキーター以外にも差別に違和感を持つ人が出てきますし、コミカルな要素がふんだんに盛り込まれていて、気楽に楽しめる作品になっています。
特に、上記2人の黒人女優と、コミュニティからのけ者にされる、おばかキャラを演じるジェシカ・チャスティン(Jessica Chastain)の演技が秀逸。「ツリー・オブ・ライフ」にも出ていたジェシカ・チャスティン、この映画でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされましたし、これからの活躍が期待される女優さんです。
また、エマ・ストーンとぶつかる婦人会のリーダーを演じるブライス・ダラス・ハワード(Bryce Dallas Howard)もなかなか良かったと思います。気の強そうなお嬢様育ちの役柄がはまり役でしたが、実は彼女、父親のロン・ハワード監督はじめ、一族そろって映画界の人。この世界では名門の出ですので、ある意味、得意な分野だったのかも知れません。
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ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜(The Help)
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