映画「オンリー・ゴッド(Only God Forgives)」

Onlygodforgives6ドライヴ」でカンヌ国際映画祭の監督賞を獲ったニコラス・ウィンディング・レフン(Nicolas Winding Refn)監督が、再びライアン・ゴズリング(Ryan Gosling)主演で撮ったクライムムービーです。

彼のファンの女性客も多いだろうと思っていたのですが、案に相違して9割方が男性客。映画を観終わった後、それも理解できました。暴力的な要素が強調された映画です。ジョニー・トー監督の香港ノワール等がお好きな方にぴったりかも知れません。

ライアン・ゴズリング演じるジュリアンは、バンコクでムエタイのジムを経営しながら、兄ビリーの麻薬密売にも関わっています。そのビリーが娼婦を殺してしまい、引退した警部であるチャンは、娼婦の父親がビリーに報復することを許します。

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兄弟の母親クリスタルが、報復で殺されたビリーの遺体を引き取るため、タイにやってきます。彼女いわく、もし殺されたのがジュリアンなら、ビリーは必ず復讐する。つまり、ジュリアンに、ビリーの敵討ちを命じるわけです。

このクリスタルを演じているのが「イングリッシュ・ペイシェント」のクリスティン・スコット・トーマス(Kristin Scott Thomas)。最近は「サラの鍵」のようなシリアスな役から「砂漠でサーモン・フィッシング」「危険なプロット」のようなコミカルな役まで幅広くこなしている女優さんですが、本作では、一説によるとドナテラ・ヴェルサーチをモデルにキャラクター設定したという、ヤクザの姉御っぽい役を小気味よく演じています。

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そして警官たちの上に君臨するチャンを演じたウィタヤー・パーンシーガーム(Vithaya Pansringarm)。タイ人の俳優さんで、実際に剣の名手だそうですが、彼の醸し出す独特の雰囲気が映画の緊迫感を高めています。ちなみにチャンが着ている半袖の服は、引退した警官が着るものだそうです。

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スタイリッシュな映像が際立つこの作品。バンコクのダークサイドの空気感を巧みに反映させています。クリスタルが泊まっているエンポリアムスイーツのバルコニー付きの部屋も、ジュリアンが屋台の間を抜けてチャンを追う猥雑なナナヌア界隈も、それぞれタイらしくて良い感じ。

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ただ、ちょっとわかりにくい映画でもあります。おそらくクリスタルに対するジュリアンの屈折した心情を、ユング的な“母なるもの”の観点から描いているのだと思いますが、チャンと一人娘、殺された娼婦と仕返しする父親といった母親不在の登場人物もポイントになっていて、どうも腑に落ちませんでした。

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また、カンヌ映画祭で上映された際、激しい暴力シーンに賛否両論あったそうですが、私も、チャンが出てくるとグッと身構えながら観ていました。

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