映画「50歳の恋愛白書(The Private Lives of Pippa Lee)」

Poster ダニエル・デイ・ルイス(Daniel Day-Lewis)のパートナーとしても有名なレベッカ・ミラー(Rebecca Miller)監督の最新作です。邦題だけ見ると安っぽいメロドラマのようですが、その実、母娘3代の生き方の物語。女性の心情を精緻に描写した、なかなか奥深い作品です。

個人的にはとても感銘を受けました。でもすべての女性に刺さる映画ではないかも知れません。10代の頃、母親に反発したり母親の生き方を否定したりしたことがある人なら、母親と同世代になって、当時の母親の立場と自分に対する思いを理解し、痛みを感じたことがあるはず。そんな人なら、グッとくる瞬間のある映画だと思います。

出版業で成功した年の離れた夫と結婚したPippa Lee。男女の双子に恵まれ、幸せで満ち足りた家庭生活を営んでいました。心臓発作で倒れた夫のリタイアを機に、NYからコネティカットに移り住みますが、周りは隠居生活を楽しむ人々ばかり。退屈な生活のせいか、良い妻、良い母親を演じてきたことの無理がたたったのか、夢遊病になったりします。

実はPippa Leeには、母親と織り合えずに家を飛びだし、ドラッグにおぼれ、奔放な生活を送っていた過去がありました。荒れた生活に疲れていた頃、夫となるHerb Leeと出会い、前妻Gigi Leeから奪いとるような形で結婚したから、良い妻、良い母親になろうと懸命に努力してきたのでした。いわば本当の姿を隠して、別の人生を演じてきたわけですが、ふと今までの人生に疑問を持ちます。そんな中、友人と夫が浮気をしていることを発見し・・・という感じでストーリーが展開していきます。

Blake

10代のPippa Leeをブレイク・ライブリー(Blake Lively:上の写真)、現在をロビン・ライト・ペン(Robin Wright Penn)が演じているのですが、この二人の真に迫った演技にぐんぐん引き込まれていきます。そして、夫のHerb Leeをアラン・アーキン(Alan Arkin)、Pippa Leeが心惹かれる隣人をキアヌ・リーブス(Keanu Reeves)、夫の浮気相手をウィノナ・ライダー(Winona Ryder)、夫の前妻をモニカ・ベルッチ(Monica Bellucci:下の写真)といった有名俳優が演じ、脇を固めます。

Monica

配役の妙というのでしょうか。ロビン・ライト・ペン(下の写真)演じる一見誠実な妻、モニカ・ベルッチ演じる傲慢で気の強い前妻、ウィノナ・ライダー演じる心が壊れかけた浮気相手。この三者三様の対比が物語に深みを与えているように思います。また、アラン・アーキンとキアヌ・リーブス(下の写真)も、知性と自信に溢れた成功者 vs 何をやってもうまくいかない負け犬というコントラストをうまく表現しています。

Robin

上に書いたような有名俳優に混じって、母親役のマリア・ベロ(Maria Bello:下の写真)や、少女時代のPippa Lee役のマデリン・マクナルティ(Madeline McNulty:下の写真)も素晴らしい演技をしています。もちろんレベッカ・ミラーの脚本の完成度は言うに及びませんが、その脚本にほれ込んでプロデューサーを務めたというブラッド・ピット(Brad Pitt)の眼力もたいしたものだと思います。

Mariamadeline

ちなみに、レベッカ・ミラーのお父さんは小説家のアーサー・ミラー(Arthur Miller)ですが、映画「抱擁のかけら」に出てくるダウン症の息子のエピソードは、レベッカ・ミラーの弟の話だそうです。そういえば、あの映画は父子関係を軸にした映画でした。

久しぶりにベタ褒めしてしまいましたが、まがい物ではない、大人の女性のための映画だと思います。ふとした瞬間、意外にマチュアな考え方をしている自分に気付き、驚いたことがある女性にはぜひ観て欲しい映画です。

公式サイト
50歳の恋愛白書The Private Lives of Pippa Lee

[仕入れ担当]