映画「クワイエット・プレイス(A Quiet Place)」

00 クチコミで人気が高まり、予想を大幅に超えるヒットに恵まれたというホラー映画です。「ボーダーライン」の捜査官、エミリー・ブラントと、「ワンダーストラック」の聾者の少女、ミリセント・シモンズの演技が光ります。

プロローグは夫婦と三人の子どもが打ち捨てられた商店の棚を漁っているシーンでスタート。冒頭で89日目というテロップが出ますので、何かが起こった後の世界だということがわかりますが、観ているうちにこの家族が音を立てないように注意していることに気づきます。コミュニケーションは手話です。

母親が棚の奥で埃をかぶっていた薬を見つけ、ぐったりと壁に寄りかかっていた少年に与えます。まだ小さい末っ子の男の子がオモチャのスペースシャトルを手に、これで宇宙に行くんだと、その姉と思われる女の子に絵を描いて見せます。

それを見た父親がオモチャを慌てて取り上げて電池を抜き、音が出る危険性を諭します。しかし男の子は不満そうです。それをかわいそうに思ったお姉ちゃんが、必要なものの調達が済んで両親が外に出た後、こっそりスペースシャトルを渡してあげるのですが、これが悲劇の引き金となってしまいます。

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帰り道、家族の最後尾を歩いていた男の子がオモチャのスイッチを入れてしまったばかりに、怪物に襲われて命を落としてしまうのです。

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ここまでがプロローグ。ようやくタイトルが現れ、続いて始まる場面は472日目。末っ子を失ってから約1年後です。オモチャを与えてしまった女の子も、男の子に目配りできなかった母親も悔悟と自責の念を抱えて暮らしています。

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母親は妊娠しています。当たり前ですが、妊娠は出産に至ります。産まれたての新生児に声を出さないように言い聞かせることは不可能ですから、家族にとって幸せな瞬間が悲劇に直結することを誰もが想像することでしょう。なかなか上手い仕掛けですね。

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また、父親とのやりとりから女の子が聾者であることがわかってきます。「ワンダーストラック」を観た人は、ミリセント・シモンズが聾者の女優さんだと知っていると思いますが、耳が聞こえないということは音が出ていることに気づかない、つまり危険が迫っていることがわからないわけで、本作の設定上、母親の妊娠と並ぶ重要なポイントとなります。

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こうして、音を立てずに暮らす日常と、出産に怯える緊張感で観客の気持ちを掴んで引っ張っていくこの映画、その下地になるのは家族愛です。喪失と再生というほど大袈裟なものではありませんが、これも大切な要素だと思います。

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終盤になると怪物が姿を現しますので(作り手にリドリー・スコットのファンがいるのでしょうか、という外見)、ちょっと子ども騙しっぽくなってしまいますが、そこの至るまでの見えない恐怖に怯える展開には引き込まれました。

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書き忘れましたが、父親役および監督は「プロミスト・ランド」の脚本をマット・デイモンと共同で執筆し、共演もしていたジョン・クラシンスキー(John Krasinski)。 エミリー・ブラントの公私にわたるパートナーでもあります。

公式サイト
クワイエット・プレイスA Quiet Place

[仕入れ担当]