映画「ボブという名の猫(A Street Cat Named Bob)」

00 ほのぼのとした映画です。薬物中毒で親から追い出され、ストリートミュージシャンをしながら路上で暮らしていた主人公が、野良猫のボブと出会ったことで更正していく物語。これがフィクションだったら、話が出来過ぎで気持ちが萎えそうですが、実話だということで温かい気持ちで観賞できます。

オープニングはロンドンのコヴェントガーデン。路上でギターを弾いているのが主人公のジェームズ・ボーエン(James Bowen)で、歌っているのは“Beautiful Monday”という曲です。何度もbeautifulを繰り返す単純な歌詞ですので、主人公の自作曲かと思ったら、この映画で使われた曲はすべてインディーズ系フォークバンドにいたチャーリー・フィンク(Charlie Fink)という人が作ったものだそう。主演のルーク・トレッダウェイ(Luke Treadaway)が実際にギターを弾いて歌っているそうです。

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しばらくの間、ジェームズがいかに貧しい生活をしていたか、いかに世間から冷たくあしらわれていたかが描かれていきます。そして登場するのが、薬物依存症者の回復支援をしているヴァル。おそらくNTAの職員なのでしょうが、とても親身になってジェームズを支えてくれる女性です。メタドン(methadone)を使った依存症管理のカウンセリングという本来の仕事以外に、低所得者住宅の斡旋までしてくれます。

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ロンドン近郊(原作ではトッテナムだそう)に住居を得て路上生活から抜け出したジェームズは、部屋に迷い込んできた茶トラの猫(ginger cat)に懐かれ、当初は飼い主を捜したようですが、結局、自分で飼うことになります。その過程で出会うのが近所に住むベティ。ちょっとパンキッシュでビーガンという、いかにも郊外にいそうなタイプの女性です。

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この二人の女性との出会いがジェームズにとって幸運だったことは言うまでもありませんが、後にボブと名付けられる茶トラに出会ったことが経済的な支えに繋がっていきます。つまり、ボブと一緒に演奏活動することでファンが増え、投げ銭が増えていくのです。

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典型的なファンの一人として登場するのがエルシーという中年女性。演じているのは「家族の庭」「ターナー、光に愛を求めて」といったマイク・リー作品で知られるルース・シーン(Ruth Sheen)ですが、ボブに手編みのマフラーをプレゼントしてくれます。それがボブのトレードマークになり、さまざまな人からプレゼントされて膨大な数のマフラーを持つようになったそうです。

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映画では、若干のトラブルに見舞われながらも、なんとか依存症から抜け出し、ボブとの暮らしが書籍化されてベストセラーになるところまで描かれます。

終盤の出版サイン会のシーンで主人公に話しかける男性がホンモノのジェームズ・ボーエン。既にボブ関係の書籍は、この原作以外に“The World According to Bob”や“Bob: No Ordinary Cat”など7冊刊行されていて、現在は作家&慈善活動家として活躍しているそうです。この8月に来日したときは六本木のリッツ・カールトンに泊まったらしく(本人のfacebook)、メタドン・プログラムを受けていた10年前とは大違いですね。

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監督はカナダ人のロジャー・スポティスウッド(Roger Spottiswoode)。出演者にあまり有名な人はいませんが、ヴァルを演じたジョアンヌ・フロガット(Joanne Froggatt)は「おみおくりの作法」で最後に心惹かれる女性を演じていた人です。

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ちなみにボブ役の猫は、オーディションを繰り返しても適役が見つからず、結局、ホンモノのボブが出演し、ギャラとしてWHISKASのCat Milkを受け取ったそうです。

公式サイト
ボブという名の猫 幸せのハイタッチA Street Cat Named Bob

[仕入れ担当]