映画「マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章(The Second Best Exotic Marigold Hotel)」

00 2013年日本公開の「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」の続編です。前作と同様、インドという特殊な文化の中で暮らす英国人シニアたちのドタバタ暮らしがユーモラスに描かれていて、安心して楽しめる映画に仕上がっています。

最近、こういった続編を、前作を観ていなくても楽しめるように作る例が増えてきました。中国市場を狙うためだそうですが、本作にそういった配慮はなく、登場人物の紹介もこれまでの経緯の説明もありません。前作を観てからご覧になるべき作品だと思います。

まず幕開けに登場するのは、カルフォルニアを疾走する1台のオープンカー。運転しているのはジャイプールのおんぼろ宿、マリーゴールド・ホテルの若きオーナーであるソニー・カプール、助手席は宿泊客からマネージャーになった老婆ミュリエルですが、ビジネスが成功して豪遊しているわけではなく、2軒めのホテルへの出資を頼みに来た海外出張です。

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先方の会議室で出された紅茶のティーバックに、ミュリエルがいきなり文句をつけ、そういえば前作でもホブノブ(Hobnob)のビスケットばかり食べていたなぁと記憶が蘇ってきます。その後、インドに帰国してから、アメリカではビスケットのことをクッキーと呼ぶのだと呆れてみせるあたりも、あいかわらず英国風を捨てない気むずかしい老婆のまま。マギー・スミス(Maggie Smith)はシニカルな軽口がよく似合いますね。デヴ・パテル(Dev Patel)演じるソニーのインド訛り英語との掛け合いが絶妙です。

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マリーゴールド・ホテルは長期滞在者が中心、というか前作に登場した英国シニアたちが住み着いているわけですが、そこに2名の新たな宿泊客が現れます。まずは、タムシン・グレイグ(Tamsin Greig)演じる40代後半の女性。ラヴィニア・ビーチと名乗り、母がインドで暮らしたいというので確かめに来たとチェックインします。

そしてもう一人が、ガイ・チェンバースと名乗る白髪の米国人男性。リチャード・ギア(Richard Gere)が演じるちょっとイイ男なもので、ホテル滞在者の女性がソワソワしたりするのですが、それよりソワソワするのがオーナーのソニー。ここで小説を書きたいという触れ込みがウソくさいので、出資を頼みに行ったカルフォルニアのホテルチェーンから派遣された鑑定人(inspector)に違いないと決めつけ、先客だったラヴィニアの部屋まで与えてしまう厚遇ぶりです。

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早速、ジャイプールの街を案内するといって、買収して新館にしようと目論んでいたシュプリーム・クオリティ・ホテルに案内します。閉鎖されて売りに出ているホテルですから誰もいないはずですが、なぜかそこに現れたのは、ソニーの婚約者スナイナの兄の親友であるクシャル。金持ちの上に色男とあって、スナイナの気を惹くのではないかとソニーが以前から意識している男なのですが、今度は自分が買おうとしたホテルに目をつけている様子でさらに気にいりません。

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一方、本シリーズの主役、「あなたを抱きしめる日まで」のジュディ・デンチ(Judi Dench)演じるイヴリン。夫が遺した借金のために自宅を売却してインドに渡ってくるまでずっと専業主婦だった彼女、前作ではスナイナの兄が経営するIT企業でオペレーター指導の職を得るのですが、本作では生地のバイヤーとして働いています。

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そして、前作で妻と別れ、密かにイヴリンに思いを寄せるダグラス。妻に頭の上がらない気の弱い夫のキャラでしたが、本作ではイブリンに思いを伝えよう意志を固めていく展開になります。そのダグラスを演じるのがビル・ナイ(Bill Nighy)。「ラブ・アクチュアリー」や「パイレーツ・ロック」で演じた中年ロッカーのイメージがあるせいか、スクーターに乗るとモッズ風でとってもいい感じです。果たしてキャリア志向に目覚めたイヴリンをリアシートに乗せられるのか、という観客の関心を緩やかに引っ張っていきます。

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もちろん、セリア・イムリー(Celia Imrie)演じる恋多き女性マッジや、ロナルド・ピックアップ(Ronald Pickup)演じる不良老人のノーマンといった滞在者たち、ダイアナ・ハードキャッスル(Diana Hardcastle)演じるインド在住者キャロルなど、前作からの出演者の色恋沙汰も展開していきます。70代80代が、こんなに恋愛中毒で良いのかしら?と思わなくもありませんが、セリフにあるように、何かを先送りしている余裕はない、ということで、積極的に人生を謳歌する姿勢が小気味良い作品です。

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ちなみに劇中ではミュリエルがイヴリンより19日年上ということになってますが、マギー・スミスが1934年12月28日生まれ、ジュディ・デンチが1934年12月9日生まれということで、実際はマギー・スミスの方が19日年下だそう。いずれにしても80歳を超えて、ジャイプールでロケを敢行しているのですから大したものです。

公式サイト
マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章The Second Best Exotic Marigold Hotel

[仕入れ担当]