主役の女の子がとっても愛らしくて、彼女を見守るような気分で観てしまうタイプの映画です。内容的にはちょっと苦いものを含んでいるのですが、多くの人がほのぼのとした気分で映画館を後にできると思います。
宣伝では「キッズ・オールライト」の製作チームが手がけたと強調していますが、プロデューサーの一部と出演者のジュリアン・ムーア(Julianne Moore)が重なっているだけで、特に似たタイプの映画ではありません。ふんだんにアピールポイントのある良い映画なのに、安易な売り文句で観客をミスリードしてしまう例ですね。
それはともかく、この作品の見所は、何といっても主役の6歳の少女メイジーを演じたオナタ・アプリール(Onata Aprile)の佇まい。身勝手な両親の間で健気に生きていく少女の姿が感動的です。
メイジーの父親である英国人の画商と、母親である米国人のロックミュージシャンの離婚が決まり、父親が出て行くことになります。母親は単独で親権を持つことを望んだのですが、素行に問題があると見なされて共同親権となり、メイジーは父親の家と母親の家を10日ごとに行ったり来たりして暮らすことに。
メイジーが母親の家から父親の新しい家に行くと、そこには以前ベビーシッターだったマーゴの姿が……。父親はいつの間にかマーゴと再婚していたのです。もともとマーゴと仲良しだったメイジーは、ほどなくその新しい関係を受け入れます。
続いて、母親がそれに対抗するかのように、若いバーテンダー、リンカーンと再婚します。メイジーは、長身でハンサムで優しいリンカーンとも仲良くなりますが、両親の身勝手さが直ったわけではなく、再婚相手とも容易にうまくいくわけがありません。
当然のようにトラブルが噴出するのですが、それぞれの大人の事情に気遣いしてみせるメイジーの姿が泣かせます。
また、学校に迎えに来たリンカーンのことを誇らしげに"This is my new stepfather. My father married my nanny, so Court made my mommy get married too”と紹介する愛らしさにしびれます。
見落とせないのが、メイジーの着ているものの可愛さ。衣装デザインを担当したステイシー・バタット(Stacey Battat)は、マーク・ジェイコブスのアシスタントから独立してファッション誌で活躍しながら、ソフィア・コッポラの「SOMEWHERE」や「ブリングリング」なども手がけた人だそう。
コートニー・ラブとパティ・スミスを参考に役作りしたというロックミュージシャンの母親を演じるジュリアン・ムーアの衣装もなかなか雰囲気が出ています。
そしてもう一つ注目したいのは、リンカーンを演じたアレキサンダー・スカルスガルド(Alexander Skarsgård)。「メランコリア」でキルスティン・ダンストの結婚相手を演じた人ですが、現在公開中の「ザ・イースト」でも重要な役を演じている売り出し中の俳優さんです。ちなみにお父さんは「孤島の王」や「ドラゴン・タトゥーの女」のスウェーデンの名優、ステラン・スカルスガルド。
NYを舞台に現代的な家庭の姿を描いたこの映画、原作は1897年に刊行されたヘンリー・ジェイムズ(Henry James)の同名の小説だそうです。1世紀以上前に書かれたこの作品を、設定だけ現代社会に置き換えて脚本化したそうで、改めてヘンリー・ジェイムズの鋭い視点に驚かされました。
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メイジーの瞳(What Maisie Knew)facebook
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