ラテンビート映画祭「ブランカニエベス(Blancanieves)」

Blancanieves0 今年度ラテンビート映画祭の目玉の一つではないでしょうか。今年2月のゴヤ賞で10部門受賞の栄冠に輝いた話題のスペイン映画です。隅から隅までスペイン的な魅力に溢れていて、スペイン好きの人がご覧になれば、今すぐスペインを再訪したくなると思います。

監督はビルバオ出身のパブロ・ベルヘル(Pablo Berger)。本作が3作目ですが、米国で博士号取得後、New York Film Academyで教えながら音楽プロデューサーとして活躍していたそうで、この世界では長いキャリアをもつ人のようです。

モノクロの無声映画ということで、フランスで制作された「アーティスト」と似た趣向ながら、「アーティスト」が夜の陰影を巧みに活かしていたのに対し、本作はセルビアの陽光をふんだんに取り込んでいて、やや方向性が異なります。どちらかというとミゲル・ゴメス監督の「熱波」に近いノスタルジックな味わいです。

ストーリーは、闘牛士とフラメンコダンサーの間に生まれた娘が、運悪く不幸な境遇におかれ、そこから困難を乗り越えて闘牛士として脚光を浴びるというもの。スペイン語でBlancanievesというと白雪姫のことですが、あのグリム童話の要素を織り込みながら物語が展開していきます。

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分娩時に母が亡くなり、祖母に育てられたカルメンシータ(Carmencita:カルメンの愛称)。その祖母も亡くなり、往年のスター闘牛士だった父の屋敷に引き取られていきます。

父は闘牛の事故で身体が不自由になり、屋敷のすべては継母が仕切っています。彼女はカルメンシータを邪険に扱い、家畜小屋のような部屋を与えて召使いのようにこき使います。

父親がいる2階に上がることも許されないのですが、ある日、この屋敷に来る前から可愛がっていたニワトリを追って2階に上がり、偶然、父と再会します。

継母に隠れてこっそり父に会いに行き、闘牛を教わったりするカルメンシータ。それを知った継母の陰謀である事件が起き、大人になったカルメンは小人の闘牛団に加わって、とお話が展開していくのですが、先は映画を観てのお楽しみです。

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この映画を魅力的なものにしている要素のひとつが、カルメンシータ(少女時代)を演じたソフィア・オリア(Sofía Oria)の愛らしさでしょう。表情に愛嬌があって、フラメンコを踊ったり、闘牛の練習したりする彼女を見ているうちに応援したくなっていく感じです。

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カルメン(大人時代)を演じてゴヤ賞の新人女優賞を獲ったマカレナ・ガルシア(Macarena García)も魅力的なのですが、私はソフィア・オリアに惹かれました。

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また、いじわるな継母を演じたマリベル・ベルドゥー(Maribel Verdú )。「天国の口、終りの楽園。」で強い印象を残し、「パンズ・ラビリンス」のメイド役や「テトロ」の兄嫁役など大切なパートを担ってきた彼女ですが、本作でも際立った存在感を示していて、ゴヤ賞の主演女優賞も納得の演技でした。

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そして映像と音楽の素晴らしさ。最近ではアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の「The Last Circus」「As luck would have it」を撮っているキコ・デ・ラ・リカ(Kiko de la Rica)の撮影も特筆に値しますが、アルフォンソ・デ・ビラリョンガ(Alfonso de Vilallonga)が手掛けた音楽がこの映像に重なると、あまりに心地よくて、今すぐスペインに飛びたくなります。

中でもゴヤ賞の最優秀楽曲賞を獲った"No Te Puedo Encontrar"(意訳:あなたに会えない)は、スペイン的な情緒に溢れ、いつまでも耳に残る一曲。フラメンコ好きの方には、ぜひお聴きいただきたいのでYouTubeにリンクしておきます。他の曲もサウンドトラックのサイト(たとえばここ)で試聴できますので、ご興味があればお試しください。

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いずれにしても、スペインに誘われる映画です。以前、このブログでセビリアのレアル・マエストランサ闘牛場のお話を書きましたが、アンダルシアに行ったことがある人にとって、この映画が醸し出す空気感はデジャブのようだと思います。ちなみに実際の闘牛シーンはアランフエス(Aranjuez)の闘牛場で撮影されたようですが、ここもまた風情があって良さそうですね。

公式サイト
ブランカニエベスBlancanieves

[仕入れ担当]