2011年公開の「ブルーバレンタイン」に続いてデレク・シアンフランス(Derek Cianfrance)監督とライアン・ゴズリング(Ryan Gosling)が組んだ作品です。後半では「世界にひとつのプレイブック」のブラッドリー・クーパー(Bradley Cooper)が重要な役を演じます。
デレク・シアンフランス監督にとって劇場公開用の長編2作目となるわけですが、登場人物の感情表現を抑えながら、巧みなストーリー展開とスタイリッシュな映像でみせていくスタイルがより洗練された印象です。
この監督の作品はずっと観続けることになるだろうな、と思いながら観ていました。
前作は2つの時代を往き来しながら描いていくスタイルでしたが、本作では時間軸を入れ子にせず、前半がライアン・ゴズリング演じるバイク乗りの物語、後半がブラッドリー・クーパー演じる警察官の物語となっています。
一年前に別れたロミーナと再会し、彼女と自分との間に子どもがいることを知ったバイク乗りのルーク。
彼女と復縁して2人を養っていこうと、移動遊園地の曲乗りの仕事を辞め、偶然に知り合った修理工と一緒に銀行強盗を始めます。
もう1人の主人公であるエイヴリーは、町の名士である裁判官の息子で、ロー・スクール出身ながら地元の警察に奉職した新人警察官。パトロール中に銀行強盗に遭遇し、バイクで逃げるルークを追うことになりますが、民家に隠れたルーク追いつめる中で、足に大怪我を負ってしまいます。
しかし、その負傷によって警察の英雄になっていくエイブリー。その後、警察内の不祥事に関わってしまいますが、それを糾弾することでさらに地位を高めていきます。
時はうつって15年後。州の司法長官に立候補することになったエイブリーは、離婚した妻と暮らしていた息子を引き取ることになります。
息子のAJは通い始めた高校でジェイソンという同級生と親しくなりますが、実は彼はルークの息子。
母と養父に育てられたジェイソンは、実父のことも事件のこともまったく知らされていませんでしたし、もちろんAJも15年前の事件のことを知る由もありません。偶然出会ってしまったこの2人が、その後どうなっていくかは観てのお楽しみ。
冒頭で記した通り、撮影や編集も素晴らしいのですが、余計な説明を省きつつ登場人物たちの魅力を引き出していく演出が非常に巧みで、主人公が2人いるにもかかわらず、そのどちらにも感情移入してしまう感じです。
またそれを支える脇役の人たち、ロミーナを演じたエヴァ・メンデス(Eva Mendes)も、修理工を演じたベン・メンデルソーン(Ben Mendelsohn)も、2人の子役も、とてもリアリティがあって、単純なストーリーなのにどんどん引き込まれていってしまいます。
ちなみに、エヴァ・メンデスは私生活ではライアン・ゴズリングと交際中で、彼の提案でこの配役になったとか。私生活と同じくキューバからの不法移民の二世の役ですので、スペイン語を喋ります。またベン・メンデルソーンは「アニマル・キングダム」で犯罪ファミリーの長男を演じていた人。ついでに言えば、ルーク達の写真を撮ってあげるアイスクリームショップの店員はシアンフランス監督の妻、シャノン・プラム(Shannon Plumb)とのこと。
原題の"Place Beyond the Pines"は、映画の舞台となるスケネクタディ(Schenectady)というモホーク語由来の地名を英訳したものだそうです。ニューヨーク州とはいえ、まったく都会ではなく、いかにも地縁によるしがらみや癒着がありそうな土地柄が物語にリアリティを与えているのですが、このタイトルそのものも、松林に向かって走り去るエンディングに繋がっていきます。
そしてそのエンディングで流れる曲が、ボン・イヴェール(Bon Iver)の"The Wolves (Act I and II)"。ジャック・オーディアール監督の「君と歩く世界」でも同じ曲が使われていましたが、この情緒的な音楽と印象的な情景があいまって、味わい深い余韻を残してくれます。
公式サイト
プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命(The Place Beyond the Pines)
[仕入れ担当]