映画「アニマル・キングダム(Animal Kingdom)」

Animal0 ほとんど無名の監督が撮ったオーストラリア映画ながら、クエンティン・タランティーノ監督が、2011年のベスト3に挙げたという作品。

彼が審査委員長を務めた2004年度カンヌ国際映画祭の審査員特別グランプリ「オールドボーイ」、同じく審査委員長を務めた2010年ヴェネチア国際映画祭の銀獅子賞「The Last Circus」を観たときもそう感じましたが、タランティーノ監督、この類いの映画に対する眼力だけは確かだと思いました。

17歳の高校生ジョシュアは、唯一の家族である母親が亡くなり、ずっと疎遠にしていた祖母の家で暮らすことになります。しかし祖母の家に暮らす伯父達は、兄弟揃って犯罪者ばかり。

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中でも長男のアンドリューは、銀行強盗の容疑で警察に追われている筋金入りの悪人で、ポープ(=法皇)と呼ばれて怖れられています。

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ジョシュアはガールフレンドができ、普通の高校生として生活していますが、ポープの犯罪仲間である通称バズが警察に射殺され、ポープは報復に使う車の盗難をジョシュアに命じます。

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報復は成功しますが、もちろんこの一家に嫌疑がかかり、ガイ・ピアース(Guy Pearce)演じる捜査員のネイサンは、ジョシュアに目を付けます。つまり、ジョシュアの自供を得ることで、一家の結束が崩そうという考え。

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ポープは、ジョシュアが口を割ることを怖れ、またジョシュアのガールフレンドのニッキーから情報が漏れることを怖れます。ジョシュアの祖母である通称スマーフも、自分の息子たちである兄弟を救うため、裏から手を回して、さまざまな画策をします。そんなファミリーと警察の間で、はたしてジョシュアはどう生き抜いていくのか、というのは映画を観てのお楽しみ。

細かいプロットの積み上げが実に巧みで、最後まで集中して観ることができました。映像にも緊迫感があり、エアサプライのAll Out Of Loveなど音楽も印象的で、タランティーノが絶賛するだけのことはあると思います。

また、私は初めてみた女優さんでしたが、ジョシュアの祖母役のジャッキー・ウィーヴァー(Jacki Weaver)の演技もリアリティがあって良かったと思います。このファミリーの精神的支柱という役柄ですが、この映画の物語を展開させる軸としても、彼女の存在感は大きい気がします。

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1988年にメルボルンの Walsh Street で起きた警官射殺事件と、それに関与したと思われる実在のファミリーの話が元になっているそうです。オーストラリアというと、のどかなイメージがありますが、ジョシュアの母親がヘロインの過剰摂取で亡くなる幕開けから、警官との抗争や裏取引き、そして警官射殺から終盤に至る展開と、オーストラリアのダークな側面を見せてくれる映画です。

そしてポープの兄弟や犯罪仲間が話すオーストラリア訛りの英語。ほとんど聞き取れませんでしたが、このあたりもリアルに描かれているのだと思います。

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[仕入れ担当]