こういった類いの映画はあまり観ないのですが、原作となったスーザン・コリンズ(Suzanne Collins)の小説が面白かったことと、「ウィンターズ・ボーン」のジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)が、また家族のために闘う少女を演じることの2点が気になって観てきました。
ストーリーは単純で、ある独裁国家に、ローマ時代の剣闘士のような見せ物があって、その戦士となった少女がどう生き延びるかというお話。
3部作の小説の第1部を映画化したものですし、既に続編の制作がアナウンスされていますので、小説を読んでいない人でも、主人公の少女が生き延びることは予めわかっています。ポイントは小説世界をどう映像化したかという点でしょう。
単純なストーリーと書きましたが、物語世界の設定はちょっと込み入ってます。小説でいえば、第1巻の前半すべてを費やして記しているほど。とはいえ、映画では細かい説明が大幅に省略されています。ベストセラー小説ですので、小説の読者=映画の観客という前提で制作されたのでしょうが、小説を読んでいない人が観てもわかるのか、という疑問はあります。
物語の舞台は中心都市キャピトルと12の属国で構成された独裁国家パネム。過去に属国が反乱を企てた罰として、そして永遠の服従の象徴として、毎年、属国それぞれ男女2名の贄(いけにえ)をクジで選び出し、最後の1人になるまで命がけで戦わせるイベント「ハンガーゲーム」が行われています。
主人公のカットニス・エバディーンは、亡くなった父から習った弓で密猟し、母と妹を助けている気の強い少女。密猟を通じて知り合った少年ゲールにほのかな恋心を抱いています。
贄を選ぶ抽選会、通称「刈入れ(reaping)」で、対象年齢の12歳になったばかりの妹プリムローズが選ばれてしまったカットニスは、自分が妹の代わりに志願することに。
同時に贄に選ばれた、パン屋の息子である同級生のピーター、二人の世話をするメンターであるヘイミッチと共にキャピトルに送られます。
ハンガーゲームにはさまざまな演出があり、闘いの最中、スポンサーが気に入った贄に品物を贈るという仕組みもあります。そのため、ゲーム前のパレードでは、贄たちの人気が出るように、スタイリストが華やかに飾り立てます。
専属スタイリストのシナが、石炭の産地である12区出身のカットニスとピーターのために作った衣装は「炎」をテーマにしたもの。これで二人に対する注目度が一気に上がります。
実はピーター、カットニスに密かに想いを寄せていて、それに気付いたヘイミッチは、ピーターに、ゲーム前の公開インタビューでその想いを明かし、悲恋の恋人たちとして観客の共感を得るように指示します。カットニスはその作戦に反感を覚えますが、生き残り戦略として受け入れ、ゲールへの想いとの狭間で心が揺れることになります。
家族のために命を賭けて闘う少女と、その少女を取り巻く淡い三角関係というコントラストが、この物語の面白さの源泉なのですが、たとえば続編でカットニスが革命の象徴になるなど、読者の想像を上回るダイナミックな展開も魅力だと思います。
映画の見どころは、もちろんカットニス役のジェニファー・ローレンス。意思の強そうな表情の合間に見せる少女らしい風情が観客を魅了します。この映画の出演料50万ドルに対し、続編で提示された出演料は1000万ドルに跳ね上がったということですから、それだけの価値があるということでしょう。
また、シナ役で登場するレニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)は小説のイメージ通りでしたし、ヘイミッチ役のウディ・ハレルソン(Woody Harrelson)も、小説のイメージより痩せていて清潔感がありましたが、雰囲気はよく出ていたと思います。
ちょっと気になるのが、マネシカケス(mockingjay)という鳥をかたどったブローチの由来。映画のポスターにもこのブローチと炎が使われていますが、ゲーム中にカットニスが身に着けていて、後に革命の象徴となる非常に重要なアイテムです。
小説では、刈り入れの後に同級生である区長の娘からプレゼントされ、第2部で以前の所有者にまつわるストーリーが明らかになって、話が拡がっていきます。ところが映画では区長の娘ではなく、闇市で貰うことになっているので、人と人の隠された結びつきを説明する核が欠けてしまいます。続編ではどう繋げていくのでしょう?
それにしても、このところ、闘う女の映画が多いですね。このブログでも「ハンナ」や「ウィンターズ・ボーン」「ドラゴン·タトゥーの女」などを取り上げていますが、やっぱりこれも世相の反映なのでしょうか。
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