映画「ジェーン・エア(Jane Eyre)」

Janeeyre0 非常に英国映画らしい映画です。

といっても、監督は日系の米国人ですし、主演の2人もオーストラリア人とドイツ人というマルチナショナルな作品なのですが、物語の進めかたといい、語りすぎない演技といい、どんよりとした空気感といい、私がイメージする英国映画そのものでした。

監督は、長編デビュー作である「闇の列車、光の旅」で南米からの不法移民をリアルに描いて注目を集めたキャリー・ジョージ・フクナガ(Cary Joji Fukunaga)。1977年生まれの若手で、この「ジェーン・エア」は長編2作目ですが、既に実力が認められているようで、次の監督作はスティーブン・キング(Stephen King)の小説「It」の映画化だそうです。

そして、主人公のジェーン・エアを演じたのがミア・ワシコウスカ(Mia Wasikowska)。小説では、poorでobscureでplainでlittleと表現されているジェーン・エアですから、映画を観る前は、彼女のような美少女で良いのか、とも思いましたが、まったく違和感を感じさせず、自立心が強く、一途な思いを秘めた19世紀の女性を魅力的に演じています。

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このミア・ワシコウスカ、今までも「永遠の僕たち」「キッズ・オールライト」といった個人的に大好きな作品でとても印象的な演技を見せていましたし、次の日本公開作は「愛する人」のロドリゴ・ガルシアが監督を務める「アルバート・ノッブス(Albert Nobbs)」ということで、しばらく目を離せそうにありません。

映画の構成は、小説の順序を入れ替えて作られており、まずジェーン・エアが牧師一家に助けられるところからスタート。

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その後、孤児のジェーン・エアが叔母の一家とうまくいかず、養育施設に預けられる少女時代をフラッシュバックしながら、貴族の家庭教師となり、当主ロチェスターに求婚されるまでが描かれます。

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そして結婚式当日、ロチェスターの秘密が露呈して、館を飛び出すジェーン・エア。そこから冒頭のシーンに戻り、牧師一家との出会いから、後にロチェスターと再会するまでを描いていきます。

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室内の映像はほとんど暖炉やキャンドルの炎の明るさで撮られたそうで、またロケ場所となったハドンホール(Haddon Hall)の荘重さとあいまって、非常に雰囲気のある映像に仕上がっています。

衣装も19世紀の写真を見ながら、可能な限りリアルに作ったということで、コスチューム担当のマイケル・オコナー(Michael O’Connor)はアカデミー賞にノミネートされていました。

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この例でおわかりのように、非常に緻密に作り込まれていて、作品そのものの完成度もとても高いと思います。

その上、ほぼノーメークで平凡な女性を表現したミア・ワシコウスカと、情熱的にロチェスターを演じたマイケル・ファスベンダー(Michael Fassbender)の好演が、フェアファックス夫人を演じたジュディ・デンチ(Judi Dench)をはじめとする実力派たちに支えられ、古典を素材にしながらも、古さを感じさせない魅力的な映像に仕上がっています。

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学生時代に「ジェーン・エア」を読んで感銘を受けた方なら、観ておいて損はない映画だと思います。

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[仕入れ担当]