映画「チョコレートドーナツ(Any Day Now)」

Anyday0 観に行こうと思ったら、封切館のシネスイッチ銀座では「クロワッサンで朝食を」を超える大混雑だと聞いて、躊躇しているうちに終わってしまった映画です。新宿で再上映になったので、ようやく観ることができました。

1979年のカリフォルニア。まだ同性愛者への風当たりが強かった時代に、ダウン症の子どもを薬物中毒の母親から引き取って育てようとしたゲイカップルのお話です。

監督は俳優出身のトラビス・ファイン(Travis Fine)。友人で音楽監督のPJブルーム(PJ Bloom)の父親、ジョージ・アーサー・ブルーム(George Arthur Bloom)の古い脚本を書き直したものだそう。脚本家がブルックリンに住んでいた頃、近所のゲイのヘアドレッサーが、育児放棄気味の祖母と暮らす障碍児の面倒を見ていて、そこから着想を得てゲイの養子縁組の物語を創り上げたと、このインタビューで語っています。

主人公、映画では歌手を夢見るショーダンサーという設定となったルディを演じたのが、アラン・カミング(Alan Cumming)。舞台でトニー賞を獲得しているそうで、とても歌のうまい俳優さんです。ちなみに実生活でもバイセクシャルだそう。

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彼が引き取ろうと奔走するダウン症のマルコを演じたのが、アイザック・レイバ(Isaac Leyva)。カリフォルニア州には障碍を持つ人が俳優を目指して通う演劇学校があるそうで、そこで学びながら、初めてオーディションビデオを撮ったのが本作とのこと。

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そしてルディのパートナーとなる法律家ポールを演じたのが、「ウィンターズ・ボーン」や「それでも夜は明ける」に出ていたギャレット・ディラハント(Garret Dillahunt)。ストーリー上、法廷のシーンも重要な要素ですので、真面目そうな彼は適役だったと思います。

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核となるテーマはゲイに対する偏見との闘いなのでしょうが、それよりもダウン症のマルコに注ぐルディの愛情が心に残る映画です。ちょっとした仕草や視線の温かさに、気持ちが動かされます。

また、劇中でアラン・カミングが歌う姿、特にボブ・ディランの"I Shall Be Released"を熱唱するシーンは感動的です。インタビューでは、監督からベット・ミドラーが歌うYoutubeの映像(おそらくこの映像)が送られてきてプレシャーがかかったと言っていますが、気持ちの熱さでは負けてないと思いました。

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映画の原題はその歌詞のサビの部分から取られているわけですが、その前の"I see my light come shining"という歌詞に呼応するかのようなオープニングシーン、夜の橋の上のマルコを手持ちカメラで捉えた不安定な映像が印象的です。

そして最後にパートナーのポールが記す手紙が、このオープニングシーンと重なってきます。ちょっとネタバレになってしまいそうですが、"He loved junk food. Chocolate doughnuts were his drug of choice. He was the world’s greatest disco dancer. And he liked to have a story told to him every night. As long as the story had a happy ending. Marco loved a happy ending"で終わるこの手紙にとどめを刺されました。

公式サイト
チョコレートドーナツAny Day Now

[仕入れ担当]