映画「ドライヴ(Drive)」

Drive0 ライアン・ゴズリング(Ryan Gosling)は、映画「ブルーバレンタイン」を観て以来、お気に入りの俳優さん。この「ドライヴ」は彼の持ち味が存分に発揮されたクライムムービーです。

監督のニコラス・ウィンディング・レフン(Nicolas Winding Refn)という人のことはよく知らないのですが、この映画でカンヌ映画祭の監督賞を受賞しています。ライアン・ゴズリング、「ブルーバレンタイン」のデレク・シアンフランセに続き、監督に恵まれていますね。

ちなみに脚本は「日蔭のふたり」「鳩の翼」といった文芸作品を手掛けてきたホセイン・アミニ(Hossein Amini)、原作はジェームズ・サリス(James Sallis)の2005年の小説です。

とにかくカッコいい映画です。まずオープニング。夜中のカーチェイスのシーンに80年代エレクトロポップ風の音楽が絡んできて、いきなり映画の世界に引き込まれていきます。逃走する車のドライバー(この役には名前がありません)のライアン・ゴズリングの寡黙で自信に満ちた表情にもぐっときます。

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このドライバー、映画のカースタントをしながら、自動車修理工場で働き、夜は強盗の逃走の手助けもするというミステリアスな男。常に孤独感を漂わせ、人づきあいもまったくしませんが、同じアパートに住む子連れの女性、イレーヌと出会い、ほんの少し惹かれ合います。

Drive6_2 その後、刑務所に服役中だったイレーヌの夫が帰ってきます。しかし刑務所内で負った借金があり、質屋に強盗に入らなければ家族もろともタダでは済まさないと脅されていて、それを知ったドライバーが逃走の手助けを申し出て強盗を決行。

一瞬、成功したかと思いきや、実はその犯罪計画には裏があって、イレーヌの夫はあえなく射殺され、ドライバーも、イレーヌと彼女の息子も命を狙われるハメに、というのが映画の粗筋です。

巻き込まれ型のサスペンスというのでしょうか。ちょっとしたボタンの掛け違いで、行くも地獄、戻るも地獄といった状況に陥ってしまうタイプの物語です。これがスタイリッシュな映像と音楽の組み合わせで、最初から最後まで、心地よい緊張感に満ちた映画に仕上がっています。

主人公がドライバーというのも良い設定だと思います。運転しているときに感じる孤立感というか、視界に入っている世界と隔絶されているかのような不思議な感覚が、無口なライアン・ゴズリングの演技にリアリティを与えています。

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その無表情なドライバーの内面に秘められた激しい怒りと暴力性。ちょっとした表情だけで演技できるライアン・ゴズリングだからこそ演じられる役どころかも知れません。

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そして、イレーヌ役のキャリー・マリガン(Carey Mulligan)。「17歳の肖像」や「わたしを離さないで」では芯のある女性の役でしたが、今回は、周りに振り回される、儚さを感じさせる役どころを、抑え気味に演じています。語り過ぎず、ふくみを感じさせるうまい演技だと思います。

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カーチェイスがあるとはいえ、車が何台も炎上するようなハリウッド的な映画ではなく、どちらかというとフレンチ・フィルム・ノワール的な閉塞感に満ちた映画です。男性向けの映画なのかも知れませんが、私が観た時は4割くらいが女性でしたし、女性が観ても満足できる映画だと思います。

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公式サイト
ドライヴDrive

[仕入れ担当]