映画「ゲンスブールと女たち(Gainsbourg, vie héroïque)」

Gainsbourg0 久しぶりに映画ネタです。話題作というほどではないかも知れませんが、ゲンスブール没後20年を記念して作られた注目の一作です。

監督は、コミック作家のジョアン・ スファール(Joann Sfar)。これが長編映画第一作だそうですが、ゲンスブールを題材にしたコミックを出している人だけあって、ゲンスブール的な世界の描写は的確です。映画では、彼がコミックに描いたゲンスブールが、現実のゲンスブールの鏡像のような形で登場し、ゲンスブールの置かれていた状況や彼の心情を説明する役割を担います。

映画の内容は、ゲンスブールのミュージシャンとしての一生を、女性遍歴に光を当てながら描いたもの。いわばライフストーリーのダイジェスト版ですので、ゲンスブールに興味がある人ならご存知のエピソードがたくさん出てきますし、サンジェルマンの自宅(落書きは消されていましたが)など、ご存知の場所もたくさん出てきます。

見どころは何といっても、本物そっくりのキャストたち。特に主演のエリック・エルモスニーノ(Eric Elmosnino)は、セザール賞で主演男優賞に輝いただけあって、美学校に通う若きゲンスブールから、老いて病んだゲンスブールまで、こんな演技をしてしまったら他の役のオファーが来なくなるのでは、と心配になるほどよく似ています。

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そして、ブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)役のレティシア・カスタ(Laetitia Casta)。映画「イヴ・サンローラン」で見ただけで他の映画は知りませんが、今回のバルドー役に関して言えば、映像で見て知っている若いころのバルドーに瓜二つです。

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フランス・ギャル(France Gall)役のサラ・フォレスティエ(Sara Forestier)はあまり似ていませんが、歌の音程の外しっぷりはなかなかのもの。「シャネル&ストラヴィンスキー」でお馴染のシャネルのミューズ、アンナ・ムグラリス(Anna Mouglalis)もジュリエット・グレコ(Juliette Gréco)役で貫録を見せていました。

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ちょい役ですが、ゲンスブール少年が出会う歌手のフレエル(Fréhel)役で、「セラフィーヌの庭」のヨランド・モロー(Yolande Moreau)も出ています。フレエルはアルコール依存症で破滅的な人生を生きた歌手で、映画「アメリ」にも Si tu n’étais pas là という曲が使われていたりします。

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そして、ジェーン・バーキン(Jane Birkin)役のルーシー・ゴードン(Lucy Gordon)。エンドロールで「ルーシーに捧ぐ」と出ますが、この映画の撮影後に自殺してしまった女優さんです。顔そのものはそれほど似ていませんが、華奢な体形といい、はかない雰囲気といい、若いころのジェーン・バーキンをばっちり演じています。

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ちなみに、10歳くらいのシャルロット・ゲンスブール(Charlotte Gainsbourg)も結構、似ていましたので(Orphée Silardという子役だそう)、13歳のときに父娘で歌って非難を浴びたレモン・インセスト(Lemon Incest)に展開するのかと思いましたが、これは出てきませんでした。

現在、女優としてはカンヌで主演女優賞を獲得し(個人的にはこの映画、あまりお勧めではありませんが)、ミュージシャンとしてはBeckのプロデュースでアルバムを作るなど音楽性の高さをアピールしているシャルロットですから、もしかすると本人が拒否したのかも知れません。

その他は「リラの門の切符切り」から晩年のレゲエに傾倒していた頃の曲まで、ゲンスブールのヒット曲満載で、それぞれの役者が本人になりきって歌うシーンを堪能できます。ちなみにfnacのこのページでサントラを視聴できますのでご興味ある方はどうぞ。

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ということで、フランス文化に興味がある人なら、かなり楽しめる映画だと思います。

公式サイト
ゲンスブールと女たち(Gainsbourg, vie héroïque)

[仕入れ担当]