映画「セラフィーヌの庭(Séraphine)」

Seraphine1 昨年のセザール賞(Les César du cinéma)をはじめ、世界各国の映画祭で激賞された作品ですが、ようやく岩波ホールで公開されました。

家政婦をしながら絵を描いていたセラフィーヌ・ルイ(Séraphine Louis)が、ドイツ人の画商ヴィルヘルム・ウーデ(Wilhelm Uhde)に認められ、援助を約束されながら、戦争や大恐慌など時代の荒波にもまれていくという、女流画家の半生を描いた映画です。

フリーダ・カーロ(Frida Kahlo)やカミーユ・クローデル(Camille Claudel)などアーティストを題材にした映画は、予め作品に対する知識があって、映画で作者の姿を知るというパターンが多いのですが、セラフィーヌについては作品はおろか、名前も知りませんでした。そのせいもあって、まず彼女の描く絵画の美しさに驚きました。観ながら「もっと作品を見せればいいのに」と思い続けた映画です。

Seraphine3 画集を探したのですが見つからず、作品20点が口絵に収録されているという、映画の原作を注文しました。著者のフランソワーズ・クロアレク(Françoise Cloarec)は、ヴィルヘルム・ウーデと行動を共にしていた妹、アンヌ=マリー・ウーデ(Anne=Marie Uhde)の知人だそうです。

映画については、何よりもヨランド・モロー(Yolande Moreau)の素晴らしい演技でしょう。上映前にご挨拶に立たれた岩波律子さんもおっしゃっていましたが、セラフィーヌを演じたというより、セラフィーヌが憑依したという感じでした。特に、精神的に危ういバランスの上で描き続ける無垢で情熱的な表情、心を病んでしまった老婆の純粋な目はリアル過ぎて恐ろしいくらいです。
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また、自然と共に生きたセラフィーヌを象徴する「悲しい時は田舎へ行って木に触るといい。動物や植物と話すと悲しみが消える」という台詞があるのですが、森や草原を撮った映像の美しさも見どころです。この映画の舞台であるサンリス(Senlis)はパリから北東へ40Km、CDG空港のずっと先にある村ですが、どこで撮影したのか、この村と近郊の町、シャンティイ(Chantilly)の美しい風景は記憶に残りました。
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9月にはヨランド・モローが出演する「ミックマックMicmacs)」が公開されます。こちらはヨランド・モローも出演していた「アメリAmélie)」の監督、ジャン・ピエール・ジュネ(Jean-Pierre Jeunet)の最新作。これから秋にかけて、また映画が楽しみな季節になりますね。

公式サイト
セラフィーヌの庭Séraphine

[仕入れ担当]