監督がジョディ・フォスター(Jodie Foster)、主演がジョージ・クルーニー(George Clooney)とジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)という豪華な布陣のサスペンス映画です。
私はジョディ・フォスターが監督した映画を初めて観ましたが(これが4作目だそう)、とても完成度が高くて驚きました。この1作だけでいえば「ミケランジェロ・プロジェクト」を監督したジョージ・クルーニーより才能があると思います。
舞台は人気の財テク番組「マネーモンスター」を生放送中のTVスタジオ。ジョージ・クルーニー演じる番組の司会者リー・ゲイツと、ジュリア・ロバーツ演じる番組ディレクターのパティ、ジャック・オコンネル(Jack O’Connell)演じる占拠犯カイルの3人を軸に物語が展開していきます。
いつもの調子で番組を始めようとしていた矢先、段ボール箱を抱えたカイルがスタジオに現れ、いきなり発砲してスタジオを占拠します。実はカイル、親の家を売った全財産をリーが推奨したアイビス社に投資してすべてを失ってしまったのです。
アイビス社は、コンピューターを使った超高速取引でさや取り(裁定取引)をして稼いでいたようですが、アルゴリズムのバグ(glitch)で8億ドルの損失を出したと発表していました。今日はアイビス社CEOのウォルトが番組に出演して説明する予定になっていて、カイルはそれを狙って現れたわけです。
カイルの頭の中にあるのは、リーやウォルトを始めとしたエリートたちが情報操作をして、自分のような弱者の資金を巻き上げているという思い込み。彼らに真実を白状させて謝罪させたいという、いわば八つ当たりです。
しかし、ウォルトは飛行機のトラブルで出張先のスイスから帰国してないということで、替わりにCCO(最高コミュニケーション責任者)のダイアン・レスターがアイビス社からの中継で出演することになっていて、もちろんリーも情報操作に関与した自覚はありませんので、いずれにしてもカイルの要求に応えることはできないのです。
それでもブースからスタジオを見守る番組ディレクターのパティは、激高するカイルを鎮めるため、アイビス社の損失を究明すると約束します。また、社内での幹部とのやりとりに不信感を抱いたダイアンも、直接、システムを設計したクオンツエンジニアに連絡して原因を調べ始めます。
「マネー・ショート」でライアン・ゴズリングが連れてくるドイツ銀行のクオンツエンジニアは“英語は喋れないが数学は天才的”という中国系でしたが、この「マネーモンスター」のクオンツエンジニアは韓国人。こういった仕事はアジア系が向いているというイメージなのでしょうか。その韓国人から重要な情報がもたらされ、次第に事情が明らかになってクライマックスを迎えます。
この映画がジョディ・フォスターらしいところは、登場する女性すべてが正義感を抱いているところ。番組ディレクターも、アイビス社のCOOも、カイルの説得のために呼び出される彼のガールフレンドも、みんなさまざまな事情を抱えつつ、最終的には良心に従って行動します。そういう意味でも、女性向けの映画といえるでしょう。
もちろん、有名俳優2人の共演ですから、彼らの演技も見どころです。ジョージ・クルーニーは、まさにこういう役がぴったり。ステージでの存在感といい、当意即妙のふるまいといい、このまま司会者として番組を持てばいいのに、という感じです。
そしてジュリア・ロバーツ。一昨年「8月の家族たち」を観たときも、深みのある女優さんになったなぁと感じましたが、サスペンス映画である本作でも、以前のようなドタバタ感はありません。とても良い雰囲気で映画を支えていたと思います。
その他、アイビス社CEOのウォルト役で、「パレードへようこそ」で書店主のパートナーを演じていたドミニク・ウェスト(Dominic West)が出ていて、なかなかいい味を出しています。
公式サイト
マネーモンスター(Money Monster)
[仕入れ担当]