主演がマリオン・コティヤール(Marion Cotillard)、共演がホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)とジェレミー・レナー(Jeremy Renner)と聞いただけで、映画好きの方ならグッとそそられるものがあると思います。
わたし自身、これまでジェームズ・グレイ(James Gray)監督の作品を観たことがありませんでしたので、このキャスティングでなければ、おそらく関心を持たなかったでしょう。
特にマリオン・コティヤール。近作の「君と歩く世界」など、美人女優の枠から出て渾身の演技を見せてくれる女優さんなので、予告編を見たときからずっと楽しみにしていました。
今回、彼女が演じたのは、妹と二人、母国の戦禍を逃れて米国エリス島にたどり着いたポーランド移民のエヴァ。エリス島(Ellis Island)というのは、米国への移住を希望する人のための移民管理局があったニューヨーク湾内の小島で、妹はそこで結核が発覚して病院送りになり、2人は生き別れになってしまいます。
エヴァも移民申請が通らなくて強制送還されそうになるのですが、たまたま出会ったブルーノの手引きで米国に入国して彼が働く劇場に職を得ます。しかしこのブルーノ、劇場のダンサーたちに売春を斡旋する等、裏の顔を持つ危険な男です。
ブルーノの生き方を毛嫌いしながらも、妹をエリス島の病院から連れ出すお金を得るために、彼の闇稼業に深入りしていくエヴァ。彼女を金儲けの道具に使いながらも、エヴァへの想いが募って葛藤し続けるブルーノ。
そんな中、エヴァは移民管理局の慰問公演で手品師のオーランドと出会い、互いに惹かれ合います。実はブルーノとオーランドは仲違いしていた従兄弟同士。ブルーノが働く劇場にオーランドが雇われ、エヴァと彼女に想いを寄せる2人の男性の三角関係が始まります。
そつなく世渡りしているようで、怒りに火が点いたときは手の施しようがない男、ブルーノを演じたのがホアキン・フェニックス。「ザ・マスター」のときも同じことを書きましたが、ホアキン・フェニックスの“切れた”演技は最高です。
そしてオーランドを演じたジェレミー・レナー。最近は「アメリカン・ハッスル」で生真面目な熱血漢を好演していましたが、今回もギャンブル中毒ながらエヴァには誠実に向き合おうとする姿が印象的でした。
もちろんマリオン・コティヤールの素晴らしさは言うまでもありません。エヴァの出身地がシレジアということで、ドイツ語なまりのポーランド語で演技したという彼女。「君と歩く世界」同様、役作りに対する真摯な姿勢は立派です。
ちなみに、ユダヤ系の監督でポーランド移民の話というと、思わずホロコーストをイメージしてしまいますが、この時代、シレジアではドイツの圧政に対する住民の蜂起(いわゆるシレジア蜂起)があったようで、エヴァの移民の理由はそちらにありそうです。
公式サイト
エヴァの告白(The Immigrant)
[仕入れ担当]