先週末の「宣戦布告」に続いて「革命」とは穏やかではありませんが、この映画、原題は「とても大きな夢」という意味。19世紀末、ドイツの学校教育にサッカーを導入し普及させた教師、コンラート・コッホ(Konrad Koch)を描いたドイツ映画です。
オックスフォード留学を経て、英語教師としてドイツの地方都市、ブラウンシュヴァイク(Braunschweig)の名門校に着任したコッホ先生。
普仏戦争に勝利し、ドイツ帝国が成立したばかりのこの当時、反英感情が高まっていて、英語教育に対しても、英国発祥のサッカーに対しても反感が強かったようです。
そんな状況の下、英語に関心を持たせるためにサッカーを取り入れ、楽しみながら英語を学ばせようと試みます。
映画の舞台であるカタリネウム校(Martino-Katharineum)は由緒あるギムナジウムということですから、ここ谷根千界隈でいえば開成学園のような学校なのでしょう。地元名士から「学校に楽しみは必要ない。ドイツの教育に必要なのは秩序と規律、服従だ」と非難されながらも、コッホ先生は英語と同時にフェアプレイやチームプレイの精神を伝えるという教育方針を貫いていくわけです。
実際のコンラート・コッホは英国帰りではなく、軍医だった義父を通じてサッカーに親しんだドイツ語教師だそうですが、実話ベースの物語ということで、それほどドラマティックな展開はありません。新旧の価値観の衝突や権威主義を乗り越えようと奮闘する若き教師と、その教師との交流を通じて成長していく生徒たちに光をあてた人間ドラマに仕上がっています。
コッホ先生を演じたダニエル・ブリュール(Daniel Brühl)は「グッバイ、レーニン!」の主演で有名になったドイツの俳優ですが、バルセロナ出身ということで「サルバドールの朝」や「セブン・デイズ・イン・ハバナ」といったスペイン語圏の映画でも活躍している人。今週末から始まるラテンビート映画祭で上映されるSF映画「Eva」の演技でも今年のゴヤ賞にノミネートされた注目株です。
そのまわりを、校長を演じた「白いリボン」のブルクハルト・クラウスナー(Burghart Klaußner)、学校の支援者である地元の名士を演じた「ヒトラー 〜最期の12日間〜」のユストゥス・フォン・ドホナーニ(Justus von Dohnányi)といった具合に、今のドイツを代表する実力派が固めています。
ニーダーザクセンの美しい風景や、この時代のドイツ人の暮らしも見どころです。勉強は苦しみながらするものといった昔の日本に通じる感覚も理解しやすいと思いますし、お子さんにも安心して見せられる映画だと思います。
公式サイト
コッホ先生と僕らの革命(Der ganz große Traum)facebook
[仕入れ担当]