バカバカしいと言われれば確かにその通りなのですが、そのバカバカしさを一緒になって楽しむタイプの映画です。
監督は「ビフォア・ミッドナイト」「6才のボクが、大人になるまで。」のリチャード・リンクレイター(Richard Linklater)。12年以上の歳月を要した前作「6才のボク・・・」とは反対に、1980年8月28日(木)の午後から新学期が始まる9月1日(月)の明け方まで約3日間だけの物語です。
ちなみに9月の第1月曜日はレイバー・デーですので、たいていの学校は休みのはずですが、設定からして、細かいことを気にせず気楽に楽しみましょうという映画だと思います。
舞台はテキサスの大学。野球の推薦枠で入学した新入生のジェイクが、野球部の寮内のチームメイトと繰り広げるハチャメチャな青春群像を描いていきます。
原題はご存知ヴァン・ヘイレンの3rdアルバム収録の曲名。まさにタイトル通り、てんこ盛り状態でディスコからカントリー・バー、TVゲームからマリファナまでさまざまなサブカルチャーが登場しますが、やはり音楽の使い方はこの監督ならではでしょう。
ザ・ナックの“My Sharona”で始まり、みんなでシュガーヒルギャング“Rapper’s Delight”を歌いながらドライブした後に流れるのは、チープ・トリック“ I Want You To Want Me”。途中でシックの“Good Times”もかかりますが、80年代の気分というとやはりナイル・ロジャースなんでしょうね。“Rapper’s Delight”で一気に観客をこの時代に引き込んでいきます。
ストーリー的には、ほんの少しボーイミーツガールの要素があるだけで、ほとんどはバカ騒ぎの描写に費やされます。
舞台となった1980年は、1960年生まれのリチャード・リンクレイター監督がちょうどサム・ヒューストン州立大学に在学していた頃。米国が特に好景気に沸いた時代ではありませんので、自身の青春の記憶から、大学生らしい陽気なライフスタイルをピックアップして映像化していったということでしょう。
終盤で年齢詐称して入学してきたチームメイトのエピソードが登場しますが、いつまでもこの生活を楽しんでいたいというモラトリアムな気分と、それが許されていた佳き時代へのノスタルジー。それを何の躊躇もなく全力で全方向に展開していく映画です。
それだけだと単なるオバカ映画になってしまいますので、ちょっと箴言めいたセリフを盛り込んでいるところがミソ。
たとえば、No one on their deathbed is filled with regrets of the things they’ve done. It’s those things they didn’t do. (死の床で後悔するのはやったことではなく、やり残したこと)とか、I mean, it’s ridiculous to roll a boulder up a mountain over and over and over again, but so is everything else in life. When you really think about it, especially a game. (何度も何度も巨岩を山に運び上げるのは馬鹿げているが、人生とはそういうものだし、特に試合はそうだ)とか。
こういったセリフの数々が、この軽いノリの映画で重しの役割を果たし、見終えた後にそれなりの満足感を与えてくれるあたりは流石です。お一人でも、お友だちとでも、安心して観に行ける作品だと思います。
公式サイト
エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に(Everybody Wants Some!! )
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