トーマス・ルフ展 東京国立近代美術館

3年前に国立新美術館で見たアンドレアス・グルスキーと並び、現代ドイツを代表する写真家トーマス・ルフ(Thomas Ruff)。その日本初の本格的な回顧展です。

デュッセルドルフ芸術アカデミー在学中に制作した初期作品「Interiors」シリーズから、日米の報道機関から入手した写真原稿を素材にした最新作「press++」シリーズまで網羅的に紹介されています。

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こちらは2014年に発表された「negatives」の1枚。本来は原板であるネガフィルムを作品化したシリーズで、19世紀後半から20世紀初頭に制作されたアルビューメンプリントの写真をデジタル処理で反転しています。植民地時代インドのマハーラージャのポートレートが不思議な魅力を放ちます。

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少年時代より宇宙に強い関心をいだいていたルフの作品には、星や天体をモチーフにしたものがいくつかあります。土星の輪に着目した「cassini」は、宇宙探査船が撮影した衛星画像を素材にしたもの。神秘的な宇宙空間が、幾何学的デザインにみえてきます。

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ルフはここ10年ほどシャッターを切らずに、あらゆる写真を素材に新たな表現を探求していますが、デュッセルドルフの街を歩き回り自ら撮影した作品にも注目です。1992年から1996年に制作された「Night」シリーズは暗視装置を使った作品。戦争報道でみられる緑色の夜景が、ありふれた日常の風景を不安をはらんだ世界に変えます。

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アナログからデジタルに飛躍してきた写真の歴史の中で挑戦し続けるトーマス・ルフの18シーリズ、約125点の作品が堪能できるお勧めの展覧会です。

トーマス・ルフ展
http://thomasruff.jp/event/
2016年11月13日(日)まで

[店長]