ラテンビート映画祭「エヴァ(Eva)」

Eva1 2041年を舞台にした映画とはいえ、ハリウッド的なSF映画とは大きく異なります。舞台となる街並みも、行き交う自動車も、登場人物のファッションも、すべてが70年代風で、近未来的なのはロボットが日常生活に溶け込んでいることだけ。SF映画というより、ロボットと人間の交流を描いたファンタジー映画といった方が良さそうな作品です。

監督のキケ・マイジョ(Kike Maíllo)はこれが初めての長編映画ということですが、出演している俳優たちはとても豪華です。

主役のアレックスを演じたのは、「コッホ先生と僕らの革命」「セブン・デイズ・イン・ハバナ」での演技が記憶に新しいダニエル・ブリュール(Daniel Brühl)。スペインはカタルーニャ出身のドイツ人で、欧州で注目の男優さんです。

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アレックスの世話をする執事ロボット、マックス役には「ペーパーバード」「抱擁のかけら」でお馴染のルイス・オマール(Lluís Homar)。この映画でゴヤ賞の助演男優賞を獲得していますが、彼が登場するだけで映画の安定感が格段に上がる、スペインを代表する名優の一人です。

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そしてアレックスの兄嫁ラナを演じたマルタ・エトゥラ(Marta Etura)。「プリズン211(Celda 211)」でゴヤ賞の助演女優賞を受賞している人ですが、同作の準主役としてマルタ・エトゥラと夫婦役を演じ、これもゴヤ賞の新人男優賞を受賞したアルベルト・アンマン(Alberto Ammann)が、アレックスの兄=ラナの夫を演じています。

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こういった強力な俳優陣に支えられ、キケ・マイジョ監督はこの「エヴァ」でゴヤ賞の新人監督賞を受賞していますが、それには主役のエヴァを演じ、ひときわ強い存在感を示した子役クラウディア・ベガ(Claudia Vega)のキャスティングも大きく貢献していると思います。

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前置きが長くなりましたが、映画は10年ぶりに故郷のロボット研究施設に戻ってきたアレックスと、ロボット作りのモデルを探していて出会った少女エヴァとの物語です。

自律型のロボットを作るために大学の研究施設の呼び戻されたアレックス。感情をプログラミングするため、モデルにする少年を探していましたが、街で偶然に出会った少女エヴァに興味を持ちます。実はエヴァ、街に残って研究を続けている兄ダビッドと、その妻で、かつてアレックスの恋人だったラナの一人娘で、その後、ダビッドの家で再会することになります。

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アレックスの研究に興味を持ったエヴァは、密かに協力してモデルになりますが、それを知った母親のラナは大反対。その理由が、10年前にアレックスが街を離れた事情や、その後に起こったことなどと共に、次第に明らかにされていきます。

オーディションに6ヶ月かけ、3000人の中から選んだというクラウディア・ベガの魅力もさることながら、映像作りの巧さもこの映画の見どころです。たとえば感情をプログラミングするプロセスは、ガラスのような結晶を繋ぎ合わせたり、切り離したりする、美しいCG映像で表現されていて、とても新鮮な感覚です。

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終映後に行われた監督インタビューによると、今までに例のない方法で、なおかつ、この映画の舞台になっている雪に埋もれた街のイメージに繋がるやり方を選んだとのこと。真っ白な雪で包まれたスイスの古い街並みも、ロボットと共存していることを自然に感じさせ、ファンタジックな雰囲気を盛り上げていると思います。

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また、音楽の使い方も巧みです。たとえば、パーティシーンで流れているデビット・ボウイの"Space Oddity"。この曲のドラマティックな展開に合わせて、登場人物たちの状況が変化してわけですが、これがぴったり合っていて、思わず感心してしまいます。

また、エヴァがスケートをするシーンで使われている曲。セルビア出身のMarina Gallardoという人が歌っている"About Days"という曲だそうですが、この切ない曲調が何ともいい感じです。彼女のCDは日本で売られていないようなので、スペインに行った時にチェックしてみようと思っています。

公式サイト
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エヴァ(ラテンビート映画祭2012の紹介ページ)

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[仕入れ担当]