映画「ファイティング・ファミリー(Fighting with My Family)」

fighting プロレス一家の家族愛の物語です。私はプロレスをちゃんと見たことがないのですが、それでも心を鷲づかみにされました。プロレスをよくご存じの方でしたら、さらに引き込まれると思います。

主人公のサラヤは両親が営むレスリングジムで13歳からリングに立っているプロレスラー。兄が二人いて、いちばん上の兄ロイは服役中ですが、2番目の兄ザックはこのプロレス団体:WAW(World Association of Wrestling)の中心的レスラーであり、彼が得るレッスン料と興行収入がWAWを支えています。

このWAW、世界レスリング協会という大層な団体名の割に英国の片田舎ノリッジ (Norwich)を拠点とする妙なレスリングジムですが、この映画はほぼ実話であり、今もサラヤとザックの両親がWAWを運営して活動を続けています(ウェブサイトはこちら)。プロレスラー出身の映画俳優ドウェイン・ジョンソン(Dwayne Johnson)が、この家族の結束心を描いたドキュメンタリー番組を観たことが映画化のきっかけだそう。笑いあり涙ありのストレートなスポ根ドラマです。

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映画の出だしは、幼いザックとサラヤが繰り広げる兄妹喧嘩の場面。技をかけたり絞めたりしますが、父も母もそれを止めないばかりか、煽り始めます。この一場面だけでプロレス一家の暮らしぶりが伝わってきて、彼らの魅力が伝わってくる立ち上がりです。

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兄妹の目標は憧れのWWEのリングに立つこと。WWE(World Wrestling Entertainment)というのは世界の頂点に立つ米国のプロレス団体でなんとNYSEに上場しています。両親が営んでいるWAWとは規模がまったく違いますし、影響力もファイトマネーも段違いでしょう。ですから、日頃から売り込みのビデオを送ったり、熱心にアプローチしています。

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そんななか、WWEのロンドン興業の際にザックとサラヤがトライアウトを受けに行き、サラヤだけ合格します。といっても、リングにあがれるわけではなく、練習生のような立場でトレーニングを受けるだけですが、それでも大きな一歩です。落とされたザックは落ち込みながらも妹を祝福し、かろうじて兄の威厳を保ちます。

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単身フロリダに渡ったサラヤでしたが、出発時の華々しい気分はあっという間に吹き飛び、苦悩の連続です。一緒にトレーニングを受けているライバルたちには、チアリーダー出身者や元モデルがいて、レスリング技術よりもスター性が重視されそうな雰囲気がありますが、対するサラヤは英国仕込みのゴス系で、見た目では勝てそうにありません。彼らに溶け込めず疎外感も高まります。

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元気なのは両親のみ。サラヤのフィギュアなどグッズを作ったり、娘の成功がWAWの躍進に繋がると信じてやみません。それを横目で見ながら地元ノリッジで敗北感を抱えるザックと、フロリダで挫折感と闘うサラヤ。二人の頑張りが限界に達したとき、家族の絆に綻びが生じ始めます。

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そのギクシャクした関係を修復し、家族に支えられてサラヤ(リングネーム:ペイジ)がスターダムを駆け上がっていく姿を描いた本作。労働者階級らしい価値感や、英国と米国のカルチャーギャップといった笑えるネタをちりばめ、シンプルな展開が単調にならないように作り込まれています。

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主役のサラヤ・ナイトを演じたのはフローレンス・ピュー(Florence Pugh)。まだ出演作は少ないものの、これから立て続けに話題作へ出演する期待株です。ザックを演じたのは「ダンケルク」や「ふたりの女王」に出ていたジャック・ロウデン(Jack Lowden)、父親を演じたのはニック・フロスト(Nick Frost)、母親ジュリアを演じたのはレナ・ヘディ(Lena Headey)。

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WEA側としてドウェイン・ジョンソンが登場し、思いのほか重要な役を演じる他、トレーナー役でヴィンス・ヴォーン(Vince Vaughn)も出ています。ドウェイン・ジョンソンのおかげか、マイナー作品の割に出演者も豪華で、プロレスに興味がない方がご覧になっても楽しめる一本だと思います。

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公式サイト
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