映画「デヴィッド・ボウイ・イズ(David Bowie Is Happening Now)」

Db 一昨年、ロンドンに立ち寄ったとき、ヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert Museum:V&A)での展示が終わったばかりで、ちょっと残念に思ったまま忘れていたのですが、去年の秋からシカゴ現代美術館(MCA Chicago)で巡回展が始まり、友人たちが絶賛している様子をネットで眺めているうちに、今すぐ見に行きたくなってしまった「David Bowie Is」の展覧会。

※パリで開催された展覧会の様子はこちら

残念ながら、まだまだ日本には来そうにありませんが、その埋め合わせでしょうか、V&Aのクロージングイベントを撮ったドキュメンタリーフィルムが公開されました。東京では1月24日(土)から29日(木)まで新宿ピカデリーで上映されています。

場所と日時が限られていますので、なかなか都合が付きにくいかと思いますが、デヴィッド・ボウイ好きには必見の素晴らしいドキュメンタリーです。彼のファンでなくても、英国のカウンターカルチャーに興味がある方でしたら観ておいて損はないと思います。

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映画はV&Aの最寄り駅、サウスケンジントンのホームに貼られた展覧会のポスターから始まり、V&Aの建物へ。ここで映画の案内役、展覧会のキュレーターを務めたジェフリー・マーシュ(Geoffrey Marsh)とヴィクトリア・ブロークス(Victoria Broackes)が登場するのですが、何とヴィクトリアのピアスは、パントマイムのメイクをしたデヴィッド・ボウイの顔。これまでシュープリームスやアニー・レノックスの展示を手がけてきたという彼女、ヒースフィールド校(Heathfield St Mary’s School)出身というお嬢様っぽい経歴の割になかなかロックな人です。

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この2人のナビゲートで、展覧会の各セクションを巡りながら、その合間にゲストのスピーチが挟まれます。登場するのは、作家のハニフ・クレイシ(Hanif Kureishi)、ミュージシャンのジャーヴィス・コッカー(Jarvis Cocker)、デザイナーの山本寛斎、グラフィックデザイナーのジョナサン・バーンブルック(Jonathan Barnbrook)、振り付け師のマイケル・クラーク(Michael Clark)、写真家のテリー・オニール(Terry O’Neill)、ファッションジャーナリストのイアン・ウェブ(Iain R Webb)、音楽ライターのポール・モーリー(Paul Morley)、学者で映画プロデューサーのクリストファー・フレイリング卿(Christopher Frayling)、コンデナスト社長のニコラス・コールリッジ(Nicholas Coleridge)などなど。

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この多彩な面々が、それぞれの専門分野からデヴィッド・ボウイについて語るのですが、皆さん個性的でお話がとっても面白い。なかでも、この映画に登場した唯一の日本人、山本寛斎氏は強烈です。1973年の「ジギー・スターダスト」ツアーでデヴィッド・ボウイが着た衣装は、もともと山本寛斎氏が女性用にデザインしたものだそうで、その知らせを受けて急遽NYに飛んだお話から、ほとんど英語が話せなかったので魂でコミュニケーションしたというお話まで、クロージングイベントの会場を沸かせていました。

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もちろん、デヴィッド・ボウイが着た数々のステージ衣装は、この展覧会の目玉の一つです。たとえば、当時、まだ無名ながら仕立てがめっぽう巧いと評判だったアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)に依頼したユニオンジャックの衣装。伝統的なシルエットで仕立てた後、引っ掻いたり、煙草の焼け焦げをつけて、体制に背を向ける姿勢(against the status quo)を表現しているそうです。

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また、多くのファンを虜にした下のジャンプスーツはフレディ・バレッティ(Freddie Burretti)デザインのもの。リバティプリントで暴力性を表現したというこのアイコニックなスタイルには、赤いパテントレザーのブーツを合わせています。

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ファッションの他、音楽やステージの演出はもちろん、写真や映画までさまざまな分野に関与してきたデヴィッド・ボウイ。影響を受けた相手もまた多様で、デビュー当時、衝撃を受けたというヴェルヴェット・アンダーグラウンドやルー・リードの音楽、ウォーホルのポップアートやリンゼイ・ケンプの身体芸術、ベルリン時代に交流を深めたイギーポップやブライアン・イーノ、ヴィム・ヴェンダースなど、あらゆる方面からデヴィッド・ボウイの表現の源流を探っていきます。

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それを元素の周期表を使って表現したのがポール・ロバートソン(Paul Robertson)の“The Periodic Table of Bowie”という作品。上段がデヴィッド・ボウイに影響を与えた人たちで、たとえばWaはウォーホル、Bgはバロウズ、Keはリンゼイ・ケンプ、Miは三島由紀夫、Iはイマン、下段はデヴィッド・ボウイから影響を受けた人で、Gaはレディガガ、Mdはマドンナといった具合になっています。

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公式サイト
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[仕入れ担当]