映画「タンゴ・リブレ 君を想う(Tango libre)」

Tango0 うっかりしていてブログを書く前に東京での上映が終わってしまいましたが、タンゴ好きの人にとっては見逃せない一本でしょう。監督はベルギー人のフレデリック・フォンテーヌ(Frédéric Fonteyne)、全編フランス語でごく一部スペイン語の映画です。

物語は、同じタンゴ教室に通う女性、アリスに心惹かれている看守を軸に展開します。

アリスが、夫のフェルナンとその共犯者のドミニクが収監されている刑務所に面会に行ったことで、お互いの立場に気づきますが、看守の気持ちは募るばかりです。

妻に向ける看守の視線に気づいたフェルナンに問い詰められ、タンゴ教室のことを話すアリス。それを聞いて怒り狂うフェルナン。

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しかし、それ以来、タンゴのことが気になって仕方ないフェルナンは、同じ刑務所に収監されている強面のアルゼンチン人にタンゴを教えて欲しいと頼みます。

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即座に断ったアルゼンチン人でしたが、あるとき、仲間とタンゴを踊ってみせたことで、他の囚人たちまでタンゴの魅力に目覚め、みんなで彼のレッスンを受け始めます。

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その後、ドミニクとアリスの過去が明され、物語が大きく動いていくのですが、最後はハッピーな結末を迎えますので、安心して観ていて大丈夫です。

この映画の見せ所の一つが刑務所内でタンゴを踊るシーン。アルゼンチン人の囚人を演じるアルゼンチンタンゴの大スター、チチョ・フルンボリ(Mariano Frumboli、通称Chicho)と、欧州で人気のタンゴダンサー、パブロ・テグリ(Pablo Tegli)が男性同士で踊るのですが、これが圧倒される迫力です。

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パブロ・テグリは、サリー・ポッター監督の「タンゴ・レッスン」に出ていたパブロ・ベロン(Pablo Verón)のお弟子さんのようですが、活動を始めたのがブリュッセルということで、ベルギー出身のこの監督とも繋がりがあるのかも知れません。

そんな彼らに教えを乞うフェルナンを演じるのが、バルセロナ出身のセルジ・ロペス(Sergi López)。「パンズ・ラビリンス」「Ricky リッキー」「Black Bread」「しあわせの雨傘」などに出演し、今やスペインを代表する俳優の1人と言えますが、その昔、この監督の長編2作目である「ポルノグラフィックな関係」にも出ていたようです。

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そしてアリスを演じたアンヌ・パウリスヴィック(Anne Paulicevich)。蓮っ葉な尻軽女の役どころとは裏腹に、この映画の脚本にも参画している才女です。

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そこに「プチ・ニコラ」のフランソワ・ダミアン(Francois Damiens)が真面目な看守役で絡み、個性的な登場人物たち引き立てます。

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刑務所内が舞台とはいえ、陰鬱な映画ではありません。むしろ力強いダンスに引き込まれ、その躍動感が身体に刻み込まれるような気分になります。以前、マドリードのAmor de Diosで、男性だけで踊るフラメンコを見たときも感動しましたが、男性同士のタンゴもなかなか良いものだと思いました。

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[仕入れ担当]