カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)の魅力全開といった印象の映画です。
フランソワ・オゾン(François Ozon)監督でなければ、天下のドヌーブ様に、アディダスのジャージを着せたり、流行遅れのディスコ・ダンスを踊らせたり、カラオケを熱唱させるなんて、ちょっとありえないでしょう。
ストーリーはいたって単純。ドヌーブが演じるのは、傘メーカーの創業者の娘で、父親の後を継いで社長になった夫に尽す、とても家庭的な主婦:スザンヌ。
ジョギングが趣味で、家事も大好き。家政婦の休暇中に嬉々として朝食を用意し、夫にたしなめられたりします。娘から「飾り壺(Potiche)」呼ばわりされる始末。
時代は70年代。従業員が待遇改善を求めてストを決行し、夫の心臓病が悪化します。そこでスザンヌは、市長のババンの力を借りてストを抑え、急遽、社長を代行することに……。典型的なブルジョワであるスザンヌと、左翼のババンという、一見、反目する関係の二人、実は旧知の間柄だったのです。
貞淑な妻と思われているスザンヌには意外な過去があり、それが顕わになることで物語が動いていきます。場面が変わるごとに新たな事実が明らかになり、時間軸に添って展開していく構成というのは、元々は舞台で演じられていた作品だからなのかも知れません。とってもシンプルで誰もが楽しめるコメディ映画です。
オゾン監督ですから、離婚の危機を抱える娘や、不倫に揺れる秘書など、女性の描き方は繊細ですし、市長のババン役のジェラール・ドパルデュー(Gérard Depardieu)も、ちょっと体重オーバーのように思いますが、張りきって演技しています。また、途中、ババンとの出会いを思い起こさせるシーンでは、「リッキー(Ricky)」に引き続きセルジ・ロペス(Sergi Lopez)が出演していて、端役ながら相変わらず、いい味だしてます。
個人的には、オゾン監督とカトリーヌ・ドヌーヴによる女性賛歌のように感じました。ハッピーエンディングですし、ちょっとした意外な展開もあり、リラックスした気持ちで観ると楽しく劇場を後にできる映画だと思います。
[仕入れ担当]