映画「タイピスト!(Populaire)」

Populaire 軽快なフランスのロマンティックコメディ(rom-com)です。基本的にはスポ根物語ですので、鍛えられて成功を掴んでいく田舎娘を応援しながら楽しむタイプの映画になっています。

また、描かれている時代が1958年からの数年間で、主人公の田舎娘を演じるデボラ・フランソワ(Déborah François)が着る50年代風のキュートな衣装やフランスの風俗も見どころです。

先日の「最後のマイ・ウェイ」では60年代フランスのライフスタイルが描かれていましたが、この時代を再現した映画が流行りなのかも知れません。

バスノルマンディー(Basse-Normandie)の田舎で、父が営む食料品店の手伝いをしている21歳のローズ。近所の町工場の息子との縁談が持ち上がっていますが、このまま人生を終えたくないローズは、リジュー(Lisieux)の町まで出向いて、保険代理店の秘書に応募します。

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当時、秘書は女性の憧れの職業。ローズは並み居る強気の応募者に怯みつつも、タイプの速さを売り込み、ロマン・デュリス(Romain Duris)演じるルイの秘書に試験採用されます。

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秘書としてはドジで今ひとつですが、根っからのスポーツマンであるルイは、ローズのタイピングへの情熱を見込んで、タイプライター早打ちコンテストへの出場を勧めます。これもまた、当時はキャリアの証しとして、とても人気があったコンテストだったようです。

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しかし、自己流の一本指タイプで勝ち抜くことはできません。そこで10本指でタイプする訓練を始めるのですが、ここから、鬼コーチのルイ、根性娘のローズの2人のスポ根マンガ的ストーリーが展開していきます。

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アーティスト」のベレニス・ベジョ(Bérénice Bejo)が出ているのですが、彼女が演じるマリーと、ローズの対比も面白いところです。

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ルイの幼なじみであり、タイピング訓練の一環としてローズにピアノを教えるマリーは、ノルマンディ上陸作戦でやってきた米国人と結婚していて、ローズよりやや進歩的な女性。シンプルなラインの60年代風の服を着こなし、自立志向が強く、夢に向かって突き進むローズを後押しします。

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また、ルイの母親役で、懐かしのミューミュー(Miou-Miou)が出ています。ずいぶん地味な印象になっていて気づかないかも知れませんが、フランス映画ファンなら見落とせないところでしょう。

わかりやすいストーリー展開と、愛嬌のある50年代の音楽を背景とした明るく楽しい雰囲気を楽しむ映画です。ロケ地となったバシー(Bacilly)の片田舎からリジュー、パリ、NYと都会に出ると共に、段々と自立した女性になっていくローズの前向きな姿勢に魅了されます。

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ちなみに原題の"Populaire"は映画に出てくる架空のタイプライターの商品名。ルイが発明することになっているタイプボール(Selectric typewriter)の逸話を含め、特に史実に基づくものではないようです。

公式サイト
タイピスト!Populaire

[仕入れ担当]