映画「テイク・ディス・ワルツ(Take This Waltz)」

Waltz イザベル・コイシェ(Isabel Coixet)監督「死ぬまでにしたい10のこと」「あなたになら言える秘密のこと」での演技が印象的だったサラ・ポーリー(Sarah Polley)が監督を務めた作品です。

主演は、去年公開の「ブルーバレンタイン」で、危ういバランスで成り立っていた夫婦関係の崩壊を、リアリティのある演技で表現してみせたミシェル・ウィリアムズ(Michelle Williams)。

この「テイク・ディス・ワルツ」でも、結婚5年目を迎えた心優しい夫ルーと、近所の青年ダニエルとの間で揺れるフリーライターのマーゴ役を好演しています。

物語の舞台は監督の出身地でもあるカナダ。冒頭、ノバスコシア州のルイブール要塞(Forteresse de Louisbourg)に取材で訪れたマーゴが、観光客向けアトラクションでダニエルと出会います。トロントに帰る飛行機で再会し、そこで交わした会話から親密な感情が芽生えていき、空港からのタクシーに相乗りして隣人であることを知ります。

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ちなみにこの飛行機での"I’m scared of connections"から始まる会話は、終盤、サラ・シルバーマン(Sarah Silverman)演じる義姉ジェラルディンとの会話と並んで重要ですのでお聞き逃しなく。

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ダニエルとの新しい出会いに惹かれながら、ルーとの平穏な生活を守ろうとするマーゴ。普段通り活き活きと暮らしながら、ときおり見せる虚無的な表情でアンビバレンツな感情を表現するミシェル・ウィリアムズの演技が光ります。

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十分に満たされているはずなのに、何かが欠けているような気持ち。邦題に添えられた「幸せに鈍感なんじゃない、さみしさに敏感なだけ」というキャッチコピーを体現する素晴らしい演技です。

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そしてサラ・ポーリーの演出。彼女が監督した作品は初めて観ましたが、緻密に作り込まれたシークエンスが連なっていくタイプの、ひとつひとつの情景が印象に残る映画です。

たとえば、予告編にもあるトロント島の遊園地(Centreville Amusement Park)のシーン。電飾に照らされたミシェル・ウィリアムズの無垢な表情が The Buggles の懐メロと重なり、マーゴの高揚感をリアルに伝えています。

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その他、ルーと自宅の窓越しに会話するシーン、ダニエルと海岸で会話するシーン、マティーニを前に会話するシーンなど、映像と台詞の組み合わせが絶妙で、終映後、何度も反芻してしまうようなシーンが盛り沢山です。

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また、女性監督ならでは、と思ったのが、プールのシャワールームや自宅のバスルームなどの明け透けな撮り方。あまり映画では目にしないような、女性の視点からみた日常的な風景が、何の違和感もなく映画全体にちりばめられています。

100%、混じり気なしの女性映画だと思います。個人的にとてもお勧めです。

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[仕入れ担当]