お客様から「この界隈でランチのお勧めは?」と訊かれたとき、近所の「釜竹」や「茶房はん亭」をご案内するのですが、どちらも有名店なので週末はしばらく待たないと食べられない状態です。そこで今回は、モナドから少し離れていますが、谷根千らしい個性的なお店のランチをご紹介。
根津の交差点から言問通りを上野桜木方面に上っていく坂道を善光寺坂といいますが、ちょうど坂を上りきったあたり、谷中消防署の隣にある「桃と蓮」です。もともとはバーとして夜の営業だけでしたが、今年から昼の営業を始め、近隣の評判を集めています。
茶室のにじり口を模した低い引き戸をくぐると、厚みのあるカウンターに7〜8席。こじんまりとしたお店です。店内には青の美しい写真が2点飾られていますが、これは店主である写真家が北欧の白夜を撮った作品。カウンター正面にも87年のタンゴ・アルゼンチーノをL.A.で撮った写真がピンナップされています。
70年代を欧州で暮らし、その後も南米やアジアなど世界中を撮り歩いた店主が、行った先々で覚えてきた料理を酒肴に出していたのですが、次第に料理目当ての常連客が増え、メニューもどんどん増えてきました。そのうちの何品かがランチメニューになっています。
いちばんのお勧めはラムの骨付き肉を柔らかく煮込んだクスクス。自家製のアリッサ(アフリカの唐辛子ペースト)といただくと夏の暑さもふっとびます。また夏期限定メニュー、ラタトゥイユ丼もお勧め。色とりどりのピメントやナスなど夏野菜たっぷりのラタトゥイユに温泉卵を添え、さっくり炊き上げたタイ米にのせた一品で、遅い時間に行くと品切れになっていることもある人気メニューです。
バータイムには店主がいますが、ランチタイムは女性が担当しています。たとえば土曜の担当は、Rolleiflex(二眼レフのクラシックカメラ)で写真を撮っている女性で、アート系の話題と谷根千情報にとても詳しい方。食事の間に少しおしゃべりするだけで、谷根千エリアの動きがすべてわかってしまいます。散策の前に、ここで情報を仕入れていくのも良いと思います。
今は、知る人ぞ知る隠れ家「桃と蓮」ですが、8月16日発売のBRUTUS「東京の、東へ」特集で取り上げられるそう。有名になって混んでしまうと困るなぁと、ちょっと心配している今日この頃です。
桃と蓮
台東区谷中1-1-27
090-5547-5767
不定休
[仕入れ担当]