荒木悠展 資生堂ギャラリー

国際的に活躍する映像作家、荒木悠氏の個展です。近代化を進めていた明治期の日本に訪れたフランス人作家ピエール・ロティの紀行文「秋の日本」に着目し、素材にしています。

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本展メインの映像作品《The Last Ball》はその紀行文の一章「江戸の舞踏会」と、それをもとに書かれた芥川龍之介の短編小説「舞踏会」が題材です。明治18年の鹿鳴館で実際に踊ったロティと、小説の主人公・明子のまなざしを追います。

壁面スクリーンに、ロティ役の男性と明子役の女性が iPhone を手に持ち踊る姿が映し出されますが、二人は、お互いに撮られないようにと指示を受けていますので、逃げながら踊る姿は必死です。弦楽四重奏の「美しく青きドナウ」にのって躍動感あふれるダンスをみせる二人に大きな拍手を贈りたくなります。

天井から吊られたスクリーンには、二人が踊りながら撮影した iPhone の映像を背中合わせに投影。それぞれの iPhone カメラに異なる色彩設計が用いられていて、お互いの映像が重なったときに補色しあう関係になっているそうです。

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映像作品《戯訳》シリーズでは、紀行文の「聖なる都・京都」「日光霊山」「江戸」の章で取り上げられていた場所を荒木氏が撮影。原文を訳して字幕に使っているのですが、元の紹介文はロティがみた100年以上も前の光景ですから、今とは全く趣が異なります。なかには間違った知識の紹介もあって滑稽です。

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展覧会に込められたさまざまなズレが、100年後の人々が観たときにも思わず微笑んでもらえるような「時空を超えたお土産」になることを目指しています。

荒木悠展 LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/index.html
2019年6月23日(日)まで

[店長]